やるっきゃない! 気合と期待値の狭間で揺れる園田賢 5年目の覚醒【Mリーグ2022-23観戦記10/4】担当記者:ZERO / 沖中祐也

点数状況をみてもらいたい。
ここで瑠美や松本にマンガンを放銃しても、トップ目のままオーラスを迎えられる。
親の岡田に放銃するよりはマシだ。

とはいえ【5ピン】は2人に超危険牌。耳をすませながら打牌する園田。
静寂が場を包む。通ったのだ。

この日一番のめくり合いを制したのは…

ラス目の松本だった。
リーチ・ピンフ・ドラ・裏のマンガンを瑠美から出アガリ。
またしても園田は失点することなく局を進めることに成功。
今日は明らかに見えないエネルギーに守られている。

気合いの期待値

オーラス。園田の真骨頂はここからだった。
さきほどのアガリで、松本にマンツモ条件ができる。

それでも今日の園田なら岡田あたりが軽くアガってくれるのか?

などと期待しながら園田が配牌をとる。

天使「伏せてトップですね」
園田「いや」

悪魔「伝説だ」
園田「ザッツライト!」

配牌がめちゃくちゃいい!
これをアガって突き放し、10万点トップを目指すのも悪くない。伝説の幕開けだ。

と、息巻くも8巡目に

マンツモ条件のライバル・松本からリーチが入る。

一発を受けた園田の手牌。

無筋の【8ソウ】を掴んで長考に沈む。
【8ソウ】を切ればイーシャンテンを維持できるが、果たしてどうするか?

藤崎「まぁ直撃は許されない場面なのでオリるでしょうね」
解説者はそう語るが、園田の思考はさらにその奥へとダイブしていた。

点差は11700点差。

ここに点差の妙が隠されている。
というのも、この点差はマンツモで逆転されるけど5200点や3900点の直撃では逆転されないのだ。

つまり、たとえば松本の手牌がリーチ・タンヤオ・ドラ1の場合だと、ツモられたら逆転を許すが、放銃すればセーフとなる稀有な状況と言える。
こんな不思議な点差は、自分の親のときの10500~11900点差でしか存在しない。

ドラが【9マン】、赤は自分が2枚潰していることを考えると、それくらいのリーチ(条件がある)であることは十分に考えられる。

その稀有な状況をふまえ、園田は再び松本の捨て牌に目をやる。

【8ソウ】【4ソウ】【9ソウ】が切れており、いわゆるソウズの中では危険とされる「間四軒」である。
しかし【9ソウ】【2ソウ】【4ソウ】の切り順を見て、園田は「間四軒界では通りやすい部類」と読んだ。

(単純な【2ソウ】【4ソウ】【6ソウ】【7ソウ】【9ソウ】からなら【9ソウ】【4ソウ】【2ソウ】という切り順になりやすいため)

ここまで押せる要素を上げてきたが、引く要素もある。

・一発であること
・ピンズ部分がカンチャンでアガりづらいこと

無数に存在する要素を一つ一つ精査し、それらを統合して、1つの答えを出す。
その答えは合っているかもしれないし、間違いなのかもしれない。

じゃあいちいち細かいことを考える必要はないのか。いや違う。
たとえ間違っていたとしても、正解に近づこうという姿勢が、プロとしてあるべき姿なのではないか。少なくともドリブンズの面々はそう考えている。

だから、思考を止めない。
期待値を全力で追う。
期待値を気合で追う。

なんだ、今年もやることは変わっていないじゃないか。

麻雀という運の要素の大きいゲームにおいても、小さな叡智を結晶させ、行動を決めていく。
長考に沈む園田の姿を見て、麻雀の持つ魅力の1つが伝わってこないだろうか。

園田の出した答えは…

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