10月18日(火)の第二試合、このゲームはセガサミーフェニックス・茅森早香の90000点トップという圧巻の結果で終了した。
茅森は終始高打点で攻め叩き、同卓者たちは為す術もなく点棒をもぎ取られ、完全にワンサイドゲームであったかのように見えた。
ただ私は、この半荘で二点。
もしかしたらこの結末を覆していたような、違和感を感じた局があったのである。
その当事者は、15100点持ち2着のどうにか小さなマイナスで耐えた、赤坂ドリブンズ・村上淳だった。
村上の真剣な姿勢、卓越した読み、堂々たるリーチを軸とした攻撃力にはもちろん定評がある。
だからこそ私が持った画面越しの浅はかな考えでは、村上の「もしかしたら失敗ではないか?」と映るような選択の理由がわからなかった。
一つ目は、東1局1本場である。
東家のKADOKAWAサクラナイツ・岡田紗佳が開局に2900を茅森からアガっただけの、平たい状況。
岡田が終盤の14巡目にリーチ。
そしてこれに16巡目、追いついたのが北家の村上だった。
村上の手は、ドラの単騎のチートイツ。
ただし残りツモは1回しかなく、ここはヤミテンにしたところ。
そして次巡の村上最終手番──。
村上が持ってきたのはである。
岡田は、という切り順で切ってリーチしている。
共に3枚見えの牌、村上のはいわゆるダブルワンチャンスである。
これが当たるとすれば、岡田はさらにを持っていることになる。
さて、多少麻雀に明るい人であれば、岡田のこの切り順なら実際は通しやすい牌であることはわかると思う。
と持っているならば、引きに備えて切り順はになるからだ。
岡田がから切っているならば、岡田の手にがあることはあまりないのではないか──。
これは、多くの人が思っていただろうし、村上も当然そんなことは意識していたはずだ。
村上は河と手牌に目を落とし、
西を切ってオリ。親に押さない方を選んだ。
ところが直後にリーチの岡田が掴んだ牌は、
あろうことか先刻までの村上の当たり牌、ドラのである。
村上がダマでも押していれば、6400のアガリ。
この局は岡田の連荘になったが、実際は岡田が村上に放銃して終わっていた未来があったのだ。
私は試合終了後に、村上にこのシーンについて質問をぶつけてみた。
なぜ、は押さなかったのか──?
「まず岡田さんのリーチは、と切った後にのトイツ落とし。ほぼメンツ手の十分形だよね。
で、自分から見てとが4枚見え。ピンズのリャンメン待ちは無く、
まずか。ソーズならか、もしくはになる」
確かに。岡田はが入り目の待ちである。
「で、の切り順なんだけど、は一軒の現物なんだよね。俺が切ってる。
は誰の現物でもないわけ。
そうすると、って持ってたイーシャンテンなら、終盤なので俺の現物残してから切ってるケースあるでしょう」
ははぁ、なるほど。
単純に一人麻雀の切り順を相手がしていると想定するなら、私の浅薄な読みでは切りやすい。
しかし村上は、岡田の見た景色までを認識して、が絶対に安全ではないと判断したわけだ。
これは、私たち観戦者の目線では汲み取れない、高い意識だと思う。
しかし、村上はこの局でのミスがなかった、と考えているわけではなかった。
「やっぱり、切りヤミテンのときはリーチだったよ。
岡田さんのツモは2回、自分のツモは1回あって、放銃抽選はそこだけ。
打点でもリーチがいい。大体アガれないけど、たまにアガれたときが大きすぎる。
残り1回のツモで当たり牌止めてファインプレーになることなんか・・・滅多にないしね。
また、こうやって結果通る牌でやめてしまうリスクをなくせる。テンパイ料も確定するし、リーチにはこういうメリットもある。
岡田さんの捨て牌が、愚形が出てくる切り順じゃないし、相手親で自分ドラ単騎だから日和ってしまったね」
村上は自身の読みを確信しながらも、残り1巡でリーチに踏み込めなかったこと、
それ自体に後悔があったというわけだ。
さて、私が聞きたかったのはもう一つ。