村上淳は、ミスをした── その内容と反省が、やはり彼をプロたらしめる【須田良規のMリーグ2022-23セレクト・10月18日】

10月18日(火)の第二試合、このゲームはセガサミーフェニックス茅森早香の90000点トップという圧巻の結果で終了した。

茅森は終始高打点で攻め叩き、同卓者たちは為す術もなく点棒をもぎ取られ、完全にワンサイドゲームであったかのように見えた。

ただ私は、この半荘で二点。

もしかしたらこの結末を覆していたような、違和感を感じた局があったのである。

その当事者は、15100点持ち2着のどうにか小さなマイナスで耐えた、赤坂ドリブンズ村上淳だった。

村上の真剣な姿勢、卓越した読み、堂々たるリーチを軸とした攻撃力にはもちろん定評がある。

だからこそ私が持った画面越しの浅はかな考えでは、村上の「もしかしたら失敗ではないか?」と映るような選択の理由がわからなかった。

一つ目は、東1局1本場である。
東家のKADOKAWAサクラナイツ岡田紗佳が開局に2900を茅森からアガっただけの、平たい状況。

岡田が終盤の14巡目にリーチ。
そしてこれに16巡目、追いついたのが北家の村上だった。

村上の手は、ドラの【7ソウ】単騎のチートイツ
ただし残りツモは1回しかなく、ここはヤミテンにしたところ。

そして次巡の村上最終手番──。

村上が持ってきたのは【3ソウ】である。

岡田は、【5ソウ】【4ソウ】という切り順で切ってリーチしている。

共に3枚見えの牌、村上の【3ソウ】はいわゆるダブルワンチャンスである。
これが当たるとすれば、岡田はさらに【4ソウ】【5ソウ】を持っていることになる。

さて、多少麻雀に明るい人であれば、岡田のこの切り順なら実際【3ソウ】は通しやすい牌であることはわかると思う。
【4ソウ】【4ソウ】【5ソウ】【5ソウ】と持っているならば、【赤5ソウ】引きに備えて切り順は【4ソウ】【5ソウ】になるからだ。

岡田が【5ソウ】から切っているならば、岡田の手に【4ソウ】【5ソウ】があることはあまりないのではないか──。

これは、多くの人が思っていただろうし、村上も当然そんなことは意識していたはずだ。

村上は河と手牌に目を落とし、

西を切ってオリ。親に押さない方を選んだ。

ところが直後にリーチの岡田が掴んだ牌は、

あろうことか先刻までの村上の当たり牌、ドラの【7ソウ】である。
村上がダマでも押していれば、6400のアガリ。

この局は岡田の連荘になったが、実際は岡田が村上に放銃して終わっていた未来があったのだ。

私は試合終了後に、村上にこのシーンについて質問をぶつけてみた。

なぜ、【3ソウ】は押さなかったのか──?

「まず岡田さんのリーチは、【7マン】【6ピン】と切った後に【西】のトイツ落とし。ほぼメンツ手の十分形だよね。
 で、自分から見て【3ピン】【6ピン】が4枚見え。ピンズのリャンメン待ちは無く、
 まず【2マン】【5マン】【3マン】【6マン】。ソーズなら【3ソウ】【6ソウ】【6ソウ】【9ソウ】、もしくは【3ソウ】【6ソウ】【9ソウ】になる」

確かに。岡田は【9ソウ】入り目【3マン】【6マン】待ちである。

「で、【4ソウ】【5ソウ】の切り順なんだけど、【4ソウ】は一軒の現物なんだよね。俺が切ってる。
 【5ソウ】は誰の現物でもないわけ。
 そうすると、【4ソウ】【4ソウ】【5ソウ】【5ソウ】って持ってたイーシャンテンなら、終盤なので俺の現物残して【5ソウ】から切ってるケースあるでしょう」

ははぁ、なるほど。

単純に一人麻雀の切り順を相手がしていると想定するなら、私の浅薄な読みでは切りやすい。
しかし村上は、岡田の見た景色までを認識して、【3ソウ】が絶対に安全ではないと判断したわけだ。

これは、私たち観戦者の目線では汲み取れない、高い意識だと思う。

しかし、村上はこの局でのミスがなかった、と考えているわけではなかった。

「やっぱり、【8マン】切りヤミテンのときはリーチだったよ。
 岡田さんのツモは2回、自分のツモは1回あって、放銃抽選はそこだけ。
 打点でもリーチがいい。大体アガれないけど、たまにアガれたときが大きすぎる。
 残り1回のツモで当たり牌止めてファインプレーになることなんか・・・滅多にないしね。
 また、こうやって結果通る牌でやめてしまうリスクをなくせる。テンパイ料も確定するし、リーチにはこういうメリットもある。
岡田さんの捨て牌が、愚形が出てくる切り順じゃないし、相手親で自分ドラ単騎だから日和ってしまったね」

村上は自身の読みを確信しながらも、残り1巡でリーチに踏み込めなかったこと、
それ自体に後悔があったというわけだ。

さて、私が聞きたかったのはもう一つ。

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