をツモ切った次巡トップ目の岡田がドラのを切り、それに合わせるようにを引き近藤もを合わせた。
この時筆者は解説で
『ドラを合わせたので近藤もこれで倍満ツモでトップより安全に2着の構えにしましたね』と。
親の高宮がタンヤオでの仕掛けを入れ、終盤にたろうもテンパイを入れるが条件がまだ足りず、手替わりを待ちつつ、流局したら高宮の連荘でもう1局も見据えてのヤミテンを選択していたら
たろうが持ってきたのは。
テンパイを維持のため当然のツモ切り。
ポンテンが取れる近藤だがこれを鳴かず。
近藤がツモ切りして、岡田が手の内にあったをあわせ打ち、それを鳴いて近藤、テンパイ。
この時、実況の日吉と筆者との会話はこうだった。
日吉『これどうして1枚目じゃなく2枚目を鳴いたんですか?』
筆者『2枚目鳴くことによって安く見せることが出来て、この局で一緒に終わらせたい人にアピールが出来る』
といった解説をしていた。
違う。
そんな浅はかなわけないじゃないか‥。
近藤のトップになる条件は倍満ツモか、
岡田からのマンガン直撃。
そう。
近藤はマンガン直撃を虎視眈々と狙っていたのだ。
座順を見てもらいたい。
たろうの次が近藤。その次が岡田。
たろうから出るをスルーしたこのツモにもしがいたら?
リーチを打たずヤミテンでも一気通貫赤1。
をツモ切ったのはたろう。あと一枚のを持っている可能性は低い。
親の高宮はおそらくタンヤオでの仕掛け。を1枚しか持っていなかったら早々に切っているだろうから、高宮も持っている可能性は0に近い。
となると残り一枚のはまだ山に眠っているか、トップ目の岡田が持っているんじゃないか。
そしてこのマンガン直撃条件を近藤はあのツモ切りから思い描いてたのだ。
あくまでドラのを使っての倍満は逃さないが、が切られた瞬間に今度はを合わせ、岡田に自分は倍満ツモを目一杯目指していないんじゃないか? とマークを外させたところからの、アンコになってのカンもヤミテンでマンガン。
高宮、たろうが仮にを切っても近藤を経由するので、岡田はそれに合わせたとして、近藤が見逃していれば直撃も出来る。
なんとも末恐ろしいこの構想だったが、結果はを引けず、2枚目のを鳴き、最後はシャンポンに変えてたろうから2000点をアガって2着で終局となった。
仮にあの瞬間近藤がを引きヤミテンを入れたとしたら、近藤は手出しをする為、岡田は細心の注意を払って近藤にも通る牌を切っていたかもしれない。
たらればだが、最後までトップを狙う必然の2枚目ポンだったのだ。
マンガン直撃。
これはトップ目の選手もものすごく警戒をする為、かなり難しい条件だ。
しかし、解説をしながらそこを疎かにし、近藤の素晴らしいこのプレーを伝えることが出来なかった。
実況の日吉はそこに気付いて自分にパスを出してくれていたのに、大事なことを言えずだったが信頼してくれているからこそ、その後の言及をしなかったのだろう。
対局者はその瞬間必ず一番いいと思う選択をしてる。
それを伝えられる解説者に自分はなりたいと常々思っているのに、反省でしかない。
もっともっと自分も深いところまで潜り、これからも選手の素晴らしい選択を伝えられる解説者になれるように、精進し続けたい。
最高位戦日本プロ麻雀協会。
A2リーグ所属。
選手、解説、実況、司会など唯一無二のマルチプレーヤー。
『麻雀グラップラー』の異名を持つ。
Twitter:@corn708