This is 麻雀星人
This is 多井隆晴
試合を支配した
パーフェクトゲーム
文・東川亮【木曜担当ライター】2022年12月1日
大和証券Mリーグ2022-23、月が変わって12月1日の第2試合。
渋谷ABEMASは、例年11月の成績が悪いという多井隆晴が、久しぶりに出場。鋭気を養い心機一転となった「麻雀星人」が、その実力を存分に見せつけた。
第2試合
東家:岡田紗佳(KADOKAWAサクラナイツ)
南家:二階堂瑠美(EX風林火山)
西家:多井隆晴(渋谷ABEMAS)
北家:鈴木優(U-NEXT Pirates)
東2局。
多井はを重ねて4トイツになると、ピンズのリャンメンターツを壊してトイツ手に向かった。このまま自然に手を進めてもたいした手にはならなさそう。だったら守備力を担保しながらアガリに向かおうという進行だ。
チートイツ、待ちでテンパイ。ダマテンに構えたのは、親の瑠美の現物で今なら拾えそうな牌であること、また自身にドラも赤もないことから、打点のある相手からの攻撃にも備えてのことだろう。
いったんでのツモアガリを逃した後に、優からの待ちリーチが入る。常人ならアガリ逃しから攻撃を受けることに焦りを感じることもあるのかもしれないが、多井としては当然の選択が一つ裏目になっただけに過ぎない。麻雀ではよくあることだ。
ドラを引いて押し返したくなるところだが、も通っているわけではない。いったん、のトイツ落としでテンパイを崩す。
いったん受けにまわっているので、優のアガリ牌は当然のストップ。
ドラのを重ねてテンパイ復活。先ほどと違い、今回はドラドラで打点の担保もあり、一発の1翻がつかない状況。押しのリスクが減ってリターンが倍増していることもあり、ここは攻め返していく。
軍配は多井、優のアガリ牌をツモっての、ツモチートイツドラドラで2000-4000。
果たして、このアガリにたどり着ける打ち手が、地球人にどれだけいるというのか。
最初のテンパイ時に見た目枚数でを選んで800-1600ツモ。
無邪気にリーチをしていれば一発ツモで2000-4000から。
待ちリーチ、あるいはドラ引きでを勝負し、その後つかんだで優に放銃。
大半の打ち手の行き着く結末は、この3つのどれかだろう。
多井隆晴は、違うのだ。
https://twitter.com/nissin_u_f_o/status/1592442283428749315
なぜならこの男は地球人ではない、麻雀星人なのだから。攻撃と守備のバランスを極めて高いレベルで成立させる地球外のアガリで、多井が大きなリードを作った。
平常時からはもちろんだが、多井は点数を持つと、守備をかなり強く意識しながらの進行となる。東4局のこの手牌では、すでに4ブロック1雀頭の候補が決まったということで、字牌を残して数牌を切っていく。残した字牌も、共に1枚切れている親の現物と他家のオタ風、アガれそうな手だが、守備についても抜かりはない。
親の優がピンフイーペーコードラドラのダマテン満貫テンパイを入れるが、
多井も最後まで守備駒を持ちながらテンパイ。役のないが4枚切れ、アガるならタンヤオになるのみということで、当然のダマテン。
これが形式テンパイで粘ろうとした岡田から出て5200。この男、どこまでも隙がない。
南2局は親の瑠美に大物手の気配が漂うも、ピンフドラ1のダマテンであっさりと可能性をつぶす。局を進めるごとに、多井がトップになる確率はどんどんと高まっていく。
迎えた南3局の親番では、なんともぜいたくな手牌。タンヤオで仕掛けても満貫が見える手だが、ここは門前進行に構える。もちろんアガリは見ているが、なんでも鳴いて中途半端な状態で攻められることは避けたいという意識か。
門前のまま先制テンパイにたどり着くと、ここはリーチと打って出た。他3者からすれば、を含めたトイツ落としを経ての多井のリーチが、安いわけがない。3人とも「放銃」すればラスが見えてくることから、このリーチには立ち向かえないだろうという、相手の心理・思考も踏まえての選択だ。先ほどは局消化目的の慎重なダマテン、この局は攻撃的なリーチ。
ちなみに「放銃」とは「ロンされること」。この日の試合から、分かりにくい麻雀用語が放送内で出てきた場合、画面内に解説の文章が表示されるようになった。手動なのかAIによるものかは分からないが、初心者の方でもますます分かりやすい放送になっていることは素晴らしい取り組みだと思う。