テンパイを外してから数巡、鳴ける牌も出ず、ツモも字牌しか引けず嫌なムードの中、引いたのは。
くっつき牌の中ではかなり優秀。
もちろんも同じ。
56789とテンパイになる牌の種類は5種類。
しかしもの5種類聴牌するし、松本、内川は切っている牌で2人から攻め込まれた時にも打ちやすい牌。
しかし、今回はが4枚見え、も4枚見えていて安全を意識しすぎてアガリがとれないなんて本末転倒。
もも全員に打ちづらい牌とはいえ、ここは背に腹は変えられない。
を打ってテンパイチャンスを広げていく。
を引いて打ち出した牌は。
を切っている分、周りを切ってないを残す選択もあっただろう。
『最初の仕掛けでテンパイを外すとをどこまで引っ張るかが難しいんですよね‥。
けどかなり引っ張ったのは強欲な私らしさかなと。
そしてこの。
テンパイだけなら残したい! けど、全員に危ないのがこの7s、
はは切ってはいるのですが、このあとドラを引いて来ても切らないで済むように、攻守バランス的にもは持っていたい。
は亜樹さんに対しての現物だし使える牌なので残したい。(亜樹に対しては一枚しか現物がない為)
以上のことからになりました。』
完璧な説明力。。。。
麻雀に限らずではあると思うのだが、自分の思考を言語化するのは、結構難しい。
瑞原は日頃から自身の配信で振り返り配信を行っていて、聞きに行くと、分かりやすい言い回しで自分の意見も瞬間瞬間でしっかりと話すので、頭の回転もむちゃくちゃ早いんだなぁと常々思っている。
瑞原が切ったを内川がポンしてのテンパイ。
実際に内川が先に引いてたらリャンメンに受けるか、タンヤオが確定する打点でシャンポンに受けるかはわからないが、今しかないというギリギリのタイミングで離してるのが分かるだろう。
呼応するかのように亜樹からリーチが入る。
待ちはでリーチタンヤオドラドラと8000点以上が確定している大物手のリーチ。
宣言牌はで、このを鳴けば瑞原にテンパイが入るのだが、この時の瑞原の思考に、プラスポイントを積み重ね、3年間Mリーグの舞台で戦ってきている経験と強さが隠されていた。
『点棒がない親番だけど、ただがむしゃらってわけではなくて、オリることになるかもなという意識はあって、亜樹さんの宣言牌をチーしてテンパイを取らなかったのも含めて、着順取りや素点意識について、剛さんを筆頭にチームメイトと話し合ってきた自分の今のバランスだと思っています』
Mリーグはチーム戦である。
ただ、対局上では誰も助言をしたりするわけではなく自分一人で戦う。
けど、その場所に向かうまでに自分の最高のパフォーマンスを出させてくれているのはチームのおかげ。
だから安心して戦える。
そう言ってくれているように聞こえて、改めてMリーグの素晴らしさを教えてもらえた。
亜樹のリーチに一発目に切れるを残しておいたのは決して偶然じゃなく必然。
待望のを引き入れ
山に眠っていたがリーチをしている亜樹が掴み
南、赤、ドラ
5800。
チームメイトとたくさん話し合ってきて、課題であった『鳴いてからの進行』
そこに、自分らしさの要素である打点、そして終盤での守備意識のバランスを見せつけた残しでもぎ取った、集大成のようなアガリではないだろうか。
ここから瑞原はホンイツチートイツの8000点をトップ目の松本からアガり、1度も放銃することなく、この半荘トップを決め個人連勝となった。
昨シーズンの閉会式
実は筆者はこの会場にいて、選手の生の声を聞いていた。
瑞原は個人スコア1位の選手に送られるMVPを獲得し登壇。
この時のスピーチは観るものの胸を鷲掴みにしたのを鮮明に覚えている。
『私が活躍することが、働く女性や戦うお母さんをはじめ誰かの励みになれていたら嬉しいなと思います』
決して楽な道なはずがない。
でも、きっと花開くその日を、その時を、どうか見ているすべての皆様に届きますようにと願いが込められた素晴らしいスピーチだった。
Mリーグをご覧になってくれているすべての
皆様へ。
選手、関係者、すべてで作り上げて、これからも最高の番組になっていくこのMリーグを見て、麻雀の素晴らしさ、そしてその素晴らしさを麻雀を通して伝えているMリーガーをこれからももっともっと応援していただければと思います。
最高位戦日本プロ麻雀協会。
A2リーグ所属。
選手、解説、実況、司会など唯一無二のマルチプレーヤー。
『麻雀グラップラー』の異名を持つ。
Twitter:@corn708