小林剛
爆速 豪運 高火力
文・東川亮【代打ライター】2023年1月13日

村上淳が最初に牌山を上げてから最後の一礼までの時間が、手元の計測で44分40秒。大和証券Mリーグ2022-23、1月13日の第2試合は、あまりにも早く終わった。ちまたの麻雀であれば一般的なタイムだが、ある程度見やすさを考慮した所作を求められるMリーグにおいては、異例のスピード決着だった。

最少8局・流局なしという激流の一戦。持ち前の速度や手数の多さだけでなく、火力までをもいかんなく発揮したのが、U-NEXT Piratesの船長・小林剛である。

第2試合
東家:村上淳(赤坂ドリブンズ)
南家:瀬戸熊直樹(TEAM雷電)
西家:白鳥翔(渋谷ABEMAS)
北家:小林剛(U-NEXT Pirates)

東2局。小林が4巡目にしてをポンしてテンパイ。いつもの小林らしい速攻ムーブだが、待ち牌表示を見ていただければお分かりのように、既に白鳥が先手を取っていた。待ちも
と文句なく、追いついたとは言え白鳥があっさりアガるかと思われたが、

待ちが良ければ必ず勝てるわけではない。小林が待ちをに変えたところに、白鳥が
を持ってきてしまう。当然、止まらない。

赤の2000点、見慣れたアガリ。しかしこれが、小林のターボエンジンへの着火剤となった。

続く東3局では、第1ツモでがトイツになった。すでに4メンツ1雀頭の候補はほぼ定まっており、長くMリーグを見ている方であれば、「はいはい、この局もコバゴーが
ドラの2000点ね」みたいなイメージを抱いたのではないだろうか。

その状況が少し変わったのが、6巡目のドラ引き。2枚のドラを使い切っての高打点ルートを残すため、小林はターツ候補を余らせる6ブロックに構える。

次巡、を引いてソーズが連続形に。これでドラを使い切りやすいルートが生まれたため、2枚切れの
トイツを処理。

引きで1シャンテン。ここで小林は
を切った。
を残せばカン
の受けも残せたが、それ以上にドラそばの
を持つリスクを嫌ったのだ。対して、残した
は瀬戸熊、白鳥の現物で、安全度も
と比べると格段に高い。

を引いてテンパイ。ダマテンだと、
のみ出アガリできる片アガリの形。

リーチをすれば、どちらをツモってもハネ満以上が確定、の出アガリも可能になるということで、小林はリーチを選択。

追っ手が来る前に、山に2枚残っていたをツモって3000-6000。道中で
が出ていればもちろん鳴いただろうが、山に深ければこういうこともある。そして、リーチによってしっかりと最高打点に仕上げたところも見事だった。

南1局は白鳥があわやダブルリーチかという配牌をもらうが、

そこから手が進まず、一方の小林が直前に重ねていたドラのをポン。

をツモ切った瀬戸熊の手も、メンツこそないもののある程度まとまっており、ドラを残す余地はなかった。

小林はテンパイ後に村上のリーチを受けるも、押し切ってツモり、2000-4000。
そして、次局だった。

リーチ。

一発ツモ。

裏3。

His name is ZURU-GO.

なお、この局は村上が国士無双に向かっており、山に残るアガリ牌はが1枚だけだった。残りの山が40枚+見えていない王牌13枚、見えていない牌が合計53枚あり、そこから一発で
をツモる確率は1/53、およそ1.88パーセント。さらに、
は山に残り3枚で、裏ドラ表示でめくれる確率は3/52、およそ5.76パーセント。かけ合わせると、このリーチが一発裏3になる確率は、ざっくり0.11パーセントである。
数字自体は興味本位で計算しただけで他に流用できるものでもないのだが、こういう1000回に1回のミラクルがたまに起きるのも、麻雀の面白いところ。幸運は、誰の元にも平等に巡ってくる。