諦めたらそこで半荘終了ですよ ドリブンズ鈴木たろう 痛恨の放銃とその後【Mリーグ2022-23観戦記1/17】担当記者:ZERO/沖中祐也

一手遅れ、内川の2000オール(リーチ・ツモ・ドラ1)を許してしまう。
内川はさらに1本場で2600は2700オールをツモり、主導権を握ったままゲームは中盤へとむかった。

牌に遊ばれたたろう。

あの【6ソウ】は捉えられないから仕方ない。
しかし、仕方ないと言っていられる状況でもない。

レギュラーシーズンのカットラインまで約300pt。まだ試合数があるとはいえ、もう危険水域まできている。バカヅキでもなんでもいいので、とにかく結果がほしい。
それはフェニックス・魚谷も同様である。
私は魚谷のこの言葉がずっと印象に残っている。

「敗者の上にしか勝者はいないので」

冒頭で話した通り、勝者は残り、敗者は去る。華やかに見えるMリーグの舞台でもそれは同じ。人より多く勝ってきた魚谷だが、それ以上に負けを体験しているし、負けて去っていく人を見ているからこそ、勝ちにこだわる勝負哲学は揺るがない。

ドリブンズとフェニックス、試合数的にセミファイナルへの望みはまだ十分考えられるが、現実的な計算すると両チームともが通過することはかなり薄そうだ。つまり、どちらか(あるいはどちらとも)は確実にレギュラーシーズンで姿を消す。

誰がチームを去るのか…なんて無粋かつ気の早い話はしたくないが、ドラフト1位で指名された魚谷ですら、Mリーグでの成績を見ると安心はできない。
当然、たろうも同様である。

一週間に一度の対局だが、ここに生き残りがかかっている。
そう考えると、奪い合っているのは点棒でもポイントでもなく、相手の人生と言えるのかもしれない。

あまりに悔しくて裏ドラを確認していなかった

「ロン、3200は3800」

たろうがリーチ・チートイツで内川の親を終わらせると、南1局には

魚谷とのめくり合いを制し、リーチ・ピンフ・赤・裏の8000で内川追撃の態勢を整えていく。

南2局、たろうが逃せない親番を迎える。

そのたろうはここから【8マン】を切った。一打目の【8ピン】といい、ソウズのホンイツを残した選択である。
ところが

【中】をポンして切ったのは【1ソウ】
たろうは内川(下家)の切った【南】に鋭く反応していた。内川は南家であり、生牌であるダブ【南】を切ってきたということはもう手牌に孤立字牌がなく、役牌に頼らずとも形が整っているという証だ。

そこで打点上昇はドラの【東】に絞り、内川を迎撃できるように構えたのだ。
すぐに

【2ピン】【5ピン】待ちのテンパイ。
たろうの読み通り、この時の内川の手牌は

ここまで進んでいた。

「リーチ」

しかしリーチの声がかかったのは内川でなく魚谷。
たろうの待ちである【5ピン】を引き込んでのリーチである。

いつになく魚谷の表情も気合が漲っている。
たろうはもうオリない。生き残りをかけためくり合い。

たろうか── 魚谷か──

「ツモ」

「500オール」
たろうが静かに手牌を倒す。安いが手応えのあるツモアガリ。
一方で魚谷は、この半荘何度もテンパイを入れるものの、あと1牌に恵まれない。

次局、今度は内川が泥臭いタンヤオのみ3フーロの300/500でたろうの親を流し南3局へ。この局が勝負の趨勢を決めた一局となったのだ。

南3局
「勘弁してくれよ」
と3人の声が聞こえてきそうな親・内川のリーチが入る。

それも2巡目リーチだったのだ。
全員ベタオリしていたが、8巡目にとうとうたろうが手詰まった。

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