東1局。早々に親の新井のリーチがかかるなかで、内田も待ちでテンパイを入れた。なんとかアガリ形を保っていたがアガリ牌が出ないまま、最終手番でをつかみ、テンパイを諦めた。
新井のリーチはカン待ち、リーチタンヤオ。
裏が絡めば大きなダメージを被ることになっていた。トップ取りのためにテンパイ料すら惜しい内田だったが、ここはしっかりと我慢する。
次局はカン待ちでテンパイすると、即リーチを決行。引きで三色、やソーズ周りでの変化、ピンズの多メンチャンにもなりそうな牌姿だが、期待通りの変化がいつ訪れるかは分からない。ここは思い切った選択に出た。
この選択が見事にはまった。山に1枚しか残っていなかったを手繰り寄せると、裏ドラがなんと。リーチツモ裏3の満貫で、まずはトップ目に立つ。結果的にだが、自分のツモ山だけで勝負した場合、このアガリが最速のルートだった。勝敗を決する舞台では、この「結果」が何よりも重い。
3戦で唯一トップがなかった内田だったが、このアガリで勢いがついたか。
東2局の親番では、竹内からホンイツ赤、7700の直撃。竹内を単独のラス目に沈める。これで内田と竹内が敗退ボーダーをまたいで入れ替わった。
さらに、東4局では浅井からダマテンでピンフドラドラ赤の満貫を直撃。浅井もボーダー争いに引きずり込む。
どうにか抜け出したい浅井は南3局の親番で先制リーチをかけるも、逆に新井のピンフ赤3に捕まり、さらに失点。
オーラスは後がない親の竹内が2600オールでつなぎ、南4局1本場の段階で、点数状況はこのようになっていた。
新井 28600 (+71.7)
内田 47100 (▲19.4)
浅井 -2600 (▲25.1)
竹内 26900 (▲26.8)
※右の括弧内はトータルスコア
新井は1位通過がほぼ確定。内田もアガれば次のステージに進めるが、新井や浅井に満貫クラスを放銃すると敗退してしまう。現状敗退ポジションの竹内は親番なので連荘あるのみ。
そして、非常に難しい立場に置かれたのが浅井だ。
1300までは新井・内田に放銃しても勝ち上がりだが、1600点以上の放銃は本場を加えると竹内に逆転されてしまうのでアウト。一方で自身がアガる場合、内田との差が5.7ポイントのため6400以上は無条件突破になるものの、新井と竹内の点差1700点を考えると、2000から5200の打点を新井からアガってしまうと新井と竹内の点差が逆転することによって自身が竹内に逆転され、敗退となってしまうのだ。
浅井の手は打点が見えない、過酷な状況である。
竹内の手は赤含みの好形、内田・浅井を逆転する材料はそろっていた。
だが、テンパイ一番のりは内田。待ちは悪いが、アガればセミファイナル進出が決まる。ちなみにこの手は本場を入れて1600、放銃しても浅井がギリギリ助かる打点だ。
浅井もテンパイ。ポン、チーで、を切って単騎に受ける。どこからでもアガれるようにするため、赤を切って打点を下げた。
竹内は、今にもテンパイしそうだった。リーチとさえ言えれば、状況は激変しただろう。しかしこの日は、竹内の日ではなかった。
内田のアガリで、熾烈を極めた最終戦に幕が下りた。
この結果、A卓からは新井がファイナルにストレートイン、内田・浅井がセミファイナルにまわり、竹内がここで姿を消すことになった。
各者が1回ずつトップを獲った激戦で、特に最後は複雑な条件計算が要求される、条件戦ならではの戦いとなった。
そしてその一打一打には、選手たちの人生が懸かっている。この熱い戦いを、ぜひファイナルの最終打牌まで、見届けていただきたい。
さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。