BEASTの檻の中
思考と願望は絡み合い
結果と未来の明暗は分かれ
文・東川亮 2023年6月3日
BEAST Japanextドラフト会議指名オーディション選考会。
Mリーグの新規参入チームに加入する意志を示した175名のなかから選ばれた8名による戦い。勝つのはただ1人、しかしその1人は新チームのメンバーとしてMリーガーになれることが確約される。
選手たちが最初に臨む予選は、半荘4回を打ち、1位はファイナルへ進出。2位・3位はセミファイナルに進み、4位は敗退となる。
予選A組で戦うのは、竹内元太・浅井堂岐・新井啓文・内田みこの4名。内田以外の3名はいずれも団体のトップタイトルを獲得した実績があり、評価も高い。しかしここで問われるのは、この対局での結果のみだ。
■1回戦
4戦勝負でトップはファイナル行き、ラスは敗退となれば、初戦でトップを取れれば優位に立てるのは自明の理。そのチャンスを得たのは浅井だった。
道中は高打点が飛び交うなかで2着目をキープしてオーラスの親番を迎えると、ピンフ赤赤のチャンス手を見事リーチからツモりあげ、裏ドラ1枚でハネ満に。この一撃で一気にトップ目に立つ。
さらに次局は、2着目の新井から一気通貫ドラの7700は8000をダマテンで直撃。他3者へのリードを広げ、初戦のトップを盤石なものとする。
ここからの浅井がクレバーだった。南4局2本場では、ピンフ赤のテンパイをダマテンに構え、竹内から出アガリ。
次局もが暗刻の役ありテンパイをダマテンとし、再び竹内から出アガリ。
大量リードのオーラス親番はいわゆる「王様タイム」、やりたい放題暴れてもいい局面に見えるが、それで大きな手を放銃してしまえば次戦以降に響く。ダマテンでアガれるテンパイを組みつつ、放銃だけはしないようにする慎重な打ち回しで、リードを確実に次戦以降へ持っていこうという考えだろう。また、ダマテンを駆使することで相手にイメージを植え付ける狙いもあったかもしれない。
浅井は大量リードのまま初戦を終え、快勝。最終局で満貫をツモった内田が2着に浮上して試合を終えた。
■2回戦
東4局2本場、親番の新井はダブを鳴いて待ちのテンパイを入れていた。局が終盤まで進んだところで、雀頭のをさらに引き入れる。
グッと身を乗り出して場を見渡し、新井が選んだのは、
打。これはを仕掛けていた内田に警戒してのことだったという。
このが何と3枚山。そして、テンパイの内田の手にはマンズが1枚もなかった。
内田から7700は8300の直撃。牌の巡りがかみ合った形だが、そこに至る新井の冷静な判断が光る一局となった。
次局、ダブトイツの配牌をもらった新井は、序盤こそ穏やかに字牌を切り出していたが、が重なったところでを切り、ホンイツへと向かう。ダブホンイツなら、ドラを使わずとも満貫に仕上げられる。
ほどよく手がまとまってきたところでが鳴けて1シャンテン。余談だが、新井の発声は非常にハッキリとしていて聞きやすい。発声のお手本として紹介したいくらいなので、対局をご覧になる際にはぜひ気にしてみていただきたい。
この仕掛けを実らせて満貫ツモ。トップ目からの大量加点に成功し、2戦目は新井が制した。
■3回戦
東4局。浅井は親の竹内のリーチを受けながらテンパイまでたどり着いていた。ただ、テンパイをとるならという2スジにかかる危険牌を勝負しなければならない上、待ちはとドラ表示牌のシャンポンという、決して歓迎できる待ちではない。オリるにしても、現物は現状1枚のみで、どこまで守れるかも未知数。
選択は打のテンパイ取らず。ソーズ4連形を伸ばすかドラ周りを引けば勝負するという、ある意味ではテンパイ取り以上に攻撃的と言える一打かもしれない。
ただ、これが捕まった。リーチの竹内はカン待ち、実は内田もダマテンで待ちのテンパイを入れていたが、ここは竹内が頭ハネ。裏ドラが1枚乗って満貫、浅井としては手痛い失点となった。
1回戦・2回戦と苦戦が続いていた竹内は、このアガリで息を吹き返す。東4局1本場からは3局連続でリーチが空振るものの連荘で親番をつなぎ、4本場でドラ3リーチをついに実らせて大量加点に成功、3回戦のトップを獲得した。
なお、オーラスは内田が新井から–待ちの5メンチャンリーチを出アガリ、浅井を逆転して3着に浮上し、3回戦を終えた。
新井はチートイツをテンパイしていたが、手の内には現物が2枚。それでも危険牌のを切ったのは、内田がアガることによって当面のライバル浅井がラスに沈める狙いがあってのことだろう。
残り1戦を控えての順位がこちら。新井がファイナルへジャンプアップできる首位に浮上。敗退ポジションは内田だが、大きなトップをとれば、並び次第で生き残りの目も出てくる。この点数状況によって、4回戦は混迷を極めることとなった。