瀬戸熊直樹の価値ある勝利、でも─【Mリーグ2024-25観戦記 2/11 第1試合】担当記者 #東川亮

瀬戸熊直樹の価値ある勝利、

でも─

文・東川亮【火曜担当ライター】2025年2月11日

 

第1試合

東家:多井隆晴(渋谷ABEMAS)

南家:醍醐大(セガサミーフェニックス)

西家:松ヶ瀬隆弥(EX風林火山)

北家:瀬戸熊直樹(TEAM雷電)

大和証券Mリーグ2024-25、2月11日の第1試合は、多井隆晴満貫ツモで幕を開けた。

その後は小さなアガリが続き、大きく局面が動いたのは東4局

親番の瀬戸熊が4枚にしていた【9マン】を1シャンテンで暗槓すると、リンシャン牌でテンパイしてリーチ。待ちのペン【3ピン】は4巡目に切った【6ピン】のスジとなっていて、やや盲点となりやすい。

ここに、678三色が見えていた松ヶ瀬が飛び込んでしまう。

リーチドラ、そこに裏裏で満貫。瀬戸熊が大きな加点を決める。

さらに南1局、カン【3ピン】チーでドラ【北】後付けテンパイを入れると・・・

多井のリーチに対して1シャンテンで粘った醍醐が【北】を切って放銃。瀬戸熊がトップ目に立つ。

その後は松ヶ瀬が南2局に醍醐から8000、

南3局1本場に多井から7700は8000と大きくアガって瀬戸熊を追走するも、

最終局は醍醐の満貫ツモで決着。醍醐はこれでラス目から着順アップに成功。

逃げ切った瀬戸熊は個人連勝、TEAM雷電は今年初めてチームのプラスを3桁に乗せた。結果としては万々歳、雷電ユニバースの間には歓喜や安堵が満ちた・・・

 

と書くのがきれいだが、果たして本当にそうだろうか。

瀬戸熊自身が試合後インタビューでも言及していたように、この勝利にはやはり、どこか引っかかるものがあった。

 

取り上げたいのは南3局。瀬戸熊の手はドラの【5ソウ】が赤含みで暗刻になり、ときは高打点が約束されているような手だ。アガってオーラスの親番を迎えればほぼトップは確定、そこからどれだけ素点を稼げるかというボーナスタイムも期待できる。

しかしテンパイしないまま、終盤になって親番の松ヶ瀬からリーチがかかった。待ちの【3ピン】【6ピン】【6ピン】が4枚見えで事実上の【3ピン】待ち、それでも他3者からすれば、親のリーチには立ち向かいにくい。

瀬戸熊は、松ヶ瀬がリーチ後にツモ切った【7マン】を鳴いて、満貫のテンパイを取れた。ただ、そのときは何か1牌、リスクを負わなければいけない。ソーズは【4ソウ】【5ソウ】が3枚見えで【6ソウ】が比較的打ちやすそうではあるが、瀬戸熊は鳴かなかった。

そうしてツモった牌は、なんと【7マン】。門前テンパイなら、手牌の価値はまた変わってくる。

一番真っすぐなのはドラの【5ソウ】を切っての【3ソウ】【6ソウ】s待ち。ダマテンでもハネ満確定、高目【6ソウ】ならリャンペーコーで倍満という大物手で、待ちとしてもかなり良さそうだが、親リーチにドラの【5ソウ】で打ち込んだら相応のダメージを覚悟しなければならない。

【5ソウ】よりリスクの小さい選択としては、先ほど挙げた【6ソウ】を切っての【4ソウ】【8ピン】シャンポン待ちがある。【6ピン】が全て場に見えていて【8ピン】はリャンメン待ちに当たらない牌、終盤とは言え、アガリもそれなりに期待できそうであるが、こちらもノーリスクとはいかない。

テンパイを取るなら思い切ってリーチという選択もなくはない。ただ、どちらに受けてもダマテンでアガれる手ではある。瀬戸熊は、【4ソウ】【8ピン】シャンポン待ちを選んだ。現状トップ目で相手は親リーチ、これが一番無難な選択に思える。

次巡、松ヶ瀬が【3ソウ】をツモ切った。【3ソウ】【6ソウ】に受けていればハネ満をアガっていた。

そして、さらに選択。残りツモ番1回というところで、瀬戸熊のツモは【1マン】。松ヶ瀬には通っていない。

この時点で、松ヶ瀬のリーチに通っていないリャンメンのスジは

【1マン】【4マン】【2マン】【5マン】【4ソウ】【7ソウ】【5ソウ】【8ソウ】【3ピン】【6ピン】

の5種類。【3ピン】【6ピン】は前述の通り【6ピン】がないので実質4.5スジ、リャンメン待ちに当たるとしたら、【1マン】は単純計算で20%強の放銃率である。

通したところでアガれるか分からない牌を、リスクを負って押すか否か。

瀬戸熊はオリを選択した。現状トップ目、ヘタに押して放銃となれば、トップ陥落どころか3着落ちまで見えてきてしまう。残り1巡で、アガれる公算がどれほどあるのか。万が一を避けてポイントをキープする、賢明な判断だと思う。

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