相性が悪いとかなんとか言ってた過去から、クルっと手のひらを返しておこう。
実際丸山の逆転条件は、ツモ1300/2600・出アガリ6400以上となっており、1半荘目に大きなラスを引いたとは思えないほどの緩い条件となった。
(ただしハネ満・倍満を矢島以外からアガると矢島の着順が上がってしまうためNG)
その丸山の2巡目。
ドラここから1300/2600以上となると、メンタンピンが本線。
を切ると思われたが、丸山はを切った。
345の三色があるし、を落とすのはが横に伸びてからでも遅くないという判断か。
このとき、通過ほぼ確定の親・滝沢がと捨て牌に並べていた。
私はもう麻雀をしません、という宣言であり、この局で終わることを示している。
そして残り1枚の赤が
ツモ ドラ丸山の手元にやってくる。
…ドクン 高鳴る胸を抑えてを河へ放流。
これで一気に条件を満たしやすくなった。
6巡目
ツモ ドラ
丸山はここでを切って、ピンフドラ1に照準を定める。
そして運命の分かれ道となったのがその2巡後である。
ツモ ドラ
裏目となるをツモってきた。
ピンフドラ1だけにこだわっていたら、このは不要な牌である。
だが、が暗刻になったことにより、もう1つの道が見えてきた。
テンパネ… である。丸山はを切った。こうしておくことにより、たとえばソウズで雀頭ができてのカン待ち
例
これでリーチ・ツモ・赤1できっちり1300/2600になる。
もしくはマンズで雀頭ができての待ち
例
こちらもはカンチャンでとれるので1300/2600になる。
この4年間、私が学んできたことの全てをこのMトーナメントにぶつける。
それは、私を育ててくれたドリブンズのため、そして私が打っているところを見たいと言ってくれるファンのため。
4枚目のカンが埋まる。
「リーチ」
万感の思いを込め発声する。
本当に、これが最後の発声になるかもしれない。
同じくあとのない矢島から一発でがこぼれた。
ロン(一発)「8000」
まだ、もう少しここにいていいみたい。
最後の最後で、Mの神様は丸山に幸せを届けてくれた。
4年間成長した姿を見せることが、ドリブンズ、そしてファンへの恩返しになる。
画像が載せられないのが歯がゆくて仕方ない。
そう思えるほど、インタビューでとびきりの笑顔を見せる丸山だった。
刹那の興奮
はじまるまで何も知らなかったし、オフシーズンの余興にしか思っていなかったけど、Mの舞台に立つものと立ちたいものによる魂のぶつかり合いは、個人戦ならではの面白さがある。
本編ではあまり触れられなかったが、魚谷や滝沢だって不甲斐なかったレギュラーシーズンの雪辱に燃えていた。そして負けたら即退場というような刹那的なトーナメントもまた良い。
シーズンを食うほどの魅力を感じた、Mトーナメントだったのである。
麻雀ブロガー。フリー雀荘メンバー、麻雀プロを経て、ネット麻雀天鳳の人気プレーヤーに。著書に「ゼロ秒思考の麻雀」。現在「近代麻雀」で戦術特集記事を連載中。note「ZEROが麻雀人生をかけて取り組む定期マガジン」、YouTubeチャンネル「ZERO麻雀ch」