倒れるときは前のめりで
本田朋広、
恐怖を振り払う攻めのリーチ
文・東川亮【曜担当ライター】2022年11月11日
大和証券Mリーグ2022-23、11月11日の第1試合。
本田朋広は、敗れた。
マイナス2万点オーバーの、大敗だった。
もともと、この日は本田が連闘予定だったが、内容がよくなかった場合に備え、瀬戸熊直樹が控え室にスタンバイしていた。だが、この大敗を引きずったまま間隔を空けるのは、むしろ本人のメンタル的によろしくない。闘志が萎えていないことを確認したチームは、予定通り本田を第2試合へ送り出した。
「倒れるときは前のめりで」
瀬戸熊の言葉が、本田の背中を押す。
第2試合
東家:本田朋広(TEAM雷電)
南家:小林剛(U-NEXT Pirates)
西家:松ヶ瀬隆弥(EX風林火山)
北家:滝沢和典(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
東1局。
本田の手がスムーズに進んでテンパイ、カン待ち。タンヤオになったのでこのまま出アガリも可能だが、を引けばピンフとドラでプラス2翻、それが赤ならさらに1翻と、打点アップの可能性がある。
だが、逆に言えば打点アップの種はと、1枚だけのくらいしかない。本田は手変わりを待つよりも、相手に圧力をかける親リーチによるアタックを選択した。ツモれば満貫スタート、打点的には十分だ。
そこに立ちはだかったのが滝沢。
リーチを受けてこの手牌。本田の河が強く、比較的安全に行くならのスジ、3枚持ちでカンチャンにも当たりにくい切りでの1シャンテンキープと思われたが、
滝沢の選択はなんと暗槓。
リンシャン牌でを引き入れて待ちリーチで追っかける。打点はもとより、親リーチに対して暗槓でドラを増やして戦いを挑んできたことが怖い。
さらにも暗槓。一気に正念場になった。
待ちは共に、山に残り1枚ずつだったが、愚形の本田としてはかなり肝を冷やしていただろう。だが、ここは本田が引き勝った。
お楽しみの裏ドラは2枚乗って、6000オール。第1試合ではリーチが全て空振っただけでなく、瑞原明奈へ24000を打ち込むなど散々な結果だった本田だが、ここはリーチを実らせて大量加点に成功、次局も小林から5800は6100を出アガリし、リードを広げる。
しかし、もちろんこのままでは終わらない。松ヶ瀬が東2局3本場、そして東3局2本場で満貫ツモを決めて東場の内に本田を逆転。それにしても、松ヶ瀬のリーチは本当に力強い。振り下ろす腕が「ブンッ!」とうなりをあげ、Mリーガーでもトップクラスに「ツモりそう」なオーラを感じる。
次局は本田がダブルリーチ、松ヶ瀬の追撃を受けるもアガりきって逆転、松ヶ瀬の親番を蹴ることにも成功した。
次局は滝沢がわずか2巡でリャンメン待ちリーチをかけ、高目ツモ裏1で6000オール。この試合はとにかく中盤までにリーチがかかる展開が多い。
一つ大きなターニングポイントになったと思われるのが、南1局。親番の本田が、と仕掛けていき、時間はかかったが終盤にホンイツでテンパイする。ドラが3枚河に並んでいるのは見なかったことにしてほしい。
そこに滝沢がチートイツで追いついた。待ちはか、か。
滝沢はを切り、リーチを宣言した。ピンズのホンイツでを余らせている本田に対して非常に危険な牌ではあるものの、裏を返せば待ちでのアガリはほぼないと言える。ここは放銃覚悟ででのアガリを取りにいった。東1局といい、滝沢の非常に強気な選択が印象的だったが、試合後の本人は「少し勝負を急いだかも」と振り返っていた。
結果は滝沢がをつかんで放銃となった。ちなみにこの手、ロンの場合はテンパネして親の40符3翻、7700という打点になる(ポンポンがそれぞれ4符、雀頭で2符に加え、ターツのカン待ちで2符がつくので合計12符)。ロンよりは少しだけうれしい結果となった。
リードして迎えたオーラスは、紆余曲折はあったものの、最終的には役なし待ちをリーチして勝負。
松ヶ瀬もピンフテンパイから打点アップへの渡りを見つつ、満貫直撃での逆転を狙うが、
最後は形式テンパイで連荘を狙った滝沢からを打ち取り、8000のアガリで試合を締めくくった。