#四暗刻 激動のオーラス、こぼれ落ちた優勝 それでも村上淳は前を向き歩みを進める【 #麻雀最強戦2023 】 骨肉の争い 観戦記【決勝卓】担当 #江崎しんのすけ

伏せれば優勝なので、もちろんアガリに向かう必要はない。
一応松ヶ瀬の跳満直撃条件があるので、初手でドラを処理する。

3巡が経った。
松ヶ瀬と勝又は国士か、マンズのチンイツまたは九蓮宝燈などを狙ってそう。念のため先にマンズを処理する。

村上に抜かりはなかった。各者の条件を正確に把握し、比較的危険な牌から処理していく。

しかし12巡目、村上の手が止まる。

様子がおかしい。

もう終盤なのに、3人とも諦めている様子がない。
国士模様の松ヶ瀬は理解できる。もしかするとイーシャンテンくらいにはなっているのかもしれない。
しかし、脇の2人はどうか。三倍満ツモ条件とかなり厳しい条件なのに、松ヶ瀬に通っていない一九字牌を切ってきている。

不穏な空気を感じながらも、既に手を崩している村上は耐え忍ぶしか手段がない。

村上の予想通り、卓上では想像もつかないようなことになっていた。

たろうは四暗刻のイーシャンテン(をアンカン)

松ヶ瀬は国士無双のイーシャンテン

そして勝又も四暗刻のイーシャンテン

なんと非常に厳しい条件と思われていた3人だったが、3人ともが条件を満たした手を作り上げていたのだ。

そして数巡後。

たろうに・待ちの四暗刻テンパイが

松ヶ瀬に待ちの国士無双テンパイが入る。

たろうの待ちはが1枚、松ヶ瀬の待ちは山に2枚眠っていた。
この時点で優勝する可能性が一番高いのは松ヶ瀬になっていた。たろうは1枚のをツモるしかないが、松ヶ瀬は出アガリでもOKなので、勝又・たろうがを掴んでも優勝となる。2人とも条件クリアできる手が入っているのでツモ切るしかないだろう。

勝負は直後に決まった。

たろうが静かにをツモり、手を開けた。
8,000-16,000で条件を満たし、見事優勝を勝ち取った。

一度掴みかけた優勝。しかし村上が掴みとる瞬間に、するりとその手を抜け、どこかへ消えてしまった。

配牌だけで言えば、村上の手が圧倒的に早かった。しかし既に大差を付けている以上、アガリに向かう訳にはいかず、その結果この逆転劇が生まれた。

もっと言えば、オーラス以外の局でツモられたとしても、その後の局で村上がまた逆転するチャンスはあっただろう。しかしオーラスで決められてはその後の逆転し返すチャンスもない。

村上の心情を思うと、言葉が出ない。

プロ人生で1度あるかどうかわからない敗北を喫した後でも、村上は明るくインタビューに応えた。

明るく応える村上の姿に、村上の心情を思う視聴者の多くが救われたのではないかと思う。

そして優勝を決めたたろう。

オーラス以外は終始手牌の悪い中で、決して高打点を逃さない独創性あふれる選択を魅せ、圧巻の優勝をかざった。
今回敗れていった仲間たちの想いを血肉に変え、本戦でもその暴れっぷりを存分に発揮してくれるに違いない。