ただ、この局の醍醐が不運だったのは、
直後にをツモったことかも知れない。
これで瀬戸熊の前にあった障壁はすべて取り除かれ、テンパイに成功。
「テンション的にはとのシャンポンでリーチだったが、変化が見えるのでヤミテンにしました。」
対局後に力みなく語った瀬戸熊だったが、この「間合い」が絶妙だった。
瀬戸熊が待っていた「変化」が訪れた。
ここがタイトロープ最後の1歩。
足を踏み外せば奈落行きの場面だった。
ストレートにを切れば待ちの三面張。
場にが3枚走っているとはいえ、4枚目のを逃す手はない。
ここまで来たら勝負!
と、前がかりになっていれば醍醐への放銃だった。
だが、瀬戸熊の手が止まった。
前述のとおり、たった今3枚目のが切られたばかり。
さらに、ツモがだったことが選択の余地を与えたのだという。
「もしもツモならば、薄いけれど一気通貫もあるので打になるかもしれないですけれど、ここではこれかな? と思いました。」
瀬戸熊の選択は打。
醍醐への放銃を回避した時点で、ロマン派の皆さんはこの結末を想起したかもしれない。
11巡に渡る、長い長いタイトロープ。
瀬戸熊は見事に渡り切り、リーチツモホンイツ赤の3,000-6,000をツモ和了り。
力のこもったトルネードツモが炸裂し、トップ目の滝沢に肉薄した。
巷では、この局のビッグプレーで話題は持ちきりだっただろう。
だが、次局にこそ、Mリーグの面白さが凝縮されていたように記者は感じた。
今日は瀬戸熊選手への取材が出来たこともあり、本人の談話も交えてご紹介したい。
迎えた東4局。
5巡目の瀬戸熊の手牌からご覧いただく。
は1枚切れ、はションパイという状況。
ここに、
滝沢が2枚目のをツモ切り。
瀬戸熊がこれを叩いて、
打とシャンテン数を落として一色手に向かった。
ホンイツとマンガンが見える手とは言え、かなり遠回りな手筋。
昨シーズンまでの瀬戸熊ならば、手なりに仕掛けて2,000点とすることが多かったように思う。
手筋をモデルチェンジしたのだろうか?
瀬戸熊に質問した。
「捌きの場面を除いて、ここ数戦の戦い方として、『鳴いても戦い甲斐のある打点を作ろう』と考えています。恐らく、ここ数試合は鳴いたらホンイツ移行という手筋が多めになっていると思いますが、これには理由があって…。」
瀬戸熊の答えは実に興味深いものだった。
「Mリーグに、攻め屋が増えたからですね。」
鈴木大介や猿川真寿に代表されるように、今期のMリーグには徹底型の攻め屋が増えた。
彼らの対局で、高打点の応酬が続いているゲーム内容を鑑みれば、それは火を見るよりも明らかだ。
彼らの打点力に対抗するためには、瀬戸熊は自分のフィールドで戦うことが肝要と考えているという。
自分のフィールド…。
まさにこの局が、瀬戸熊のそれを象徴するものではなかったか?
攻めっ気強く、打点寄りにチューニングした瀬戸熊。
さらにをポンして積極策。
ここで鋭かったのが滝沢と醍醐。