この打の時点から四暗刻を意識しているのだ。
(場に高いソウズターツを嫌っている)
萩原は、6年間ずっと理想と現実の折り合いでもがき続けていた。
赤入りルールに合わせ、リーチのみの手牌でもリーチを打つように変革してきた。
メンゼンにこだわりたい手牌も、鳴くようになった。
理想だけでは勝つことができないことは、最初の数年で痛いくらいに体に刻み込まれてきたのだ。
ツモでも、この手牌をリーチで蓋することは、萩原聖人が萩原聖人でなくなる。
本当は1枚切れのですらツモ切ってやりたい気持ちだったろう。
ふっと初年度の出来事がフラッシュバックする。
デジャヴー、日本語でいうと既視感。
Mリーグの初年度、私はこんな記事を書いた。
苦渋の決断…萩原聖人はMリーグの星になれるのか【熱論!Mリーグ】
(今読むと稚拙すぎて恥ずかしいので読まなくていいです)
その中でも私は、萩原が現実と理想の狭間でもがいている姿を描いたのだ。
萩原はMリーグの舞台で一度も役満をアガっていない。
それでもずっと変わらぬまま、6年間夢を追い続けていた。
人からなんと言われようとも、意識下で四暗刻を追い続けていたのだ。
私はこのダマテンに、萩原がMリーグで魅せたかったこと、そしてそれが実現できないという筆舌に尽くしがたい悔しさを感じ、なんともいえない気持ちになってしまった。
今の言葉でいうと「エモい」になるだろうか。
結局、二枚目のが打たれ、ドラのを持ってきたところで…
妥協のカンリーチを打った。
しぶしぶしぶしぶしぶかわなんば、といったところか。
幻の役満②
このしぶしぶリーチと、白鳥が追っかけリーチに対し回っていた菅原の手牌がとんでもないことになっていた。
萩原の想いが乗り移ったのか、四暗刻のテンパイを果たしたのだ!
ただし、4巡目にを切っているのでフリテンだ!
そもそもの待ちもフリテンである。
通っていないを勝負し、フリテンながら四暗刻に受ける。
このとき、山にが一枚残っていた。
今のBEASTにとって、喉から手が出るほどほしいのは結果である。
下位4チームでの生き残りをかけたバトルロイヤル。
最下位に甘んじているBEASTだが、ここで役満をツモってトップを取ろうものなら一発で3チームに並びかけることができる。
お願い… いて!
BEASTファンの想いを乗せ、ツモ山に手を伸ばすが、無情にもは隣、つまり対面の白鳥のツモ山にいた。
白鳥の手から放たれたアガれないを悲しげに見つめていると…
すぐに萩原がをツモって裏を乗せ、2000/4000は2100/4100をツモり上げた。
幻の役満③
激しいぶつかり合いの余韻が冷めぬ中、菅原の手にまたしても恐ろしい手が舞い降りる。
2巡目に国士無双のイーシャンテンになったのだ!
逆転優勝を願うBEASTファンの想いが届いたかのよう。
だが、山にたっぷりいたとは、菅原の指の隙間をすり抜けるように他家に流れていく。
そんな中、萩原がイーシャンテンに追いついた。
萩原は手を止める。
ドラ理想を言えば、345の三色に仕上げたい。
四暗刻とともに三色は萩原の代名詞みたいなものだ。
これも確信を持って言える。
初年度の萩原ならを切ってイーシャンテンにとりつつも、三色の目は絶対に残していたはずだ。