あれから1年、
丸山奏子が咲かせる大輪の花
【決勝卓】担当記者:東川亮 2024年4月21日(日)
麻雀最強戦2024「骨肉の乱闘」。
Mリーグ、U-NEXT Piratesと赤坂ドリブンズの元メンバーと現メンバーが激突する、麻雀最強戦の中でもとりわけ明確な意図が伝わる大会である。
予選は激闘の末、両チームともに新旧メンバーが1名ずつ突破。さらには朝倉康心・渡辺太というダブル天鳳位2人が顔を合わせるという、さまざまな因果が絡み合う決勝となった。
もちろん、各者ともに勝ちたい戦いであるのは間違いない。ただ、最も勝ちたかったのは、やはり彼女だったのではないだろうか。
昨年に赤坂ドリブンズとの契約が満了となった、丸山奏子である。
今だ人気の高い彼女だが、Mリーグでは目立った結果を残すことができなかった。あれから1年、誰もが強者と認める3名を相手にどんな麻雀を見せてくれるのか。
丸山は、東1局から興味深い選択を見せた。7巡目に4枚目のをポンして1000点のテンパイ。ただ、門前ならばリャンメン2つの1シャンテン、しかもリャンペーコーも期待できる形である。赤牌がなく高打点が作りにくい最強戦ルールにおいて、この手を1000点で済ませるのはもったいない気もする。
ポイントは、このを「8pを鳴いている朝倉が」「手の内から」切ったこと。場に1枚切れのは、丸山の目からは明らかに孤立牌だったことが分かる。それを前巡のより後に切ったということは、すでに手の内が十分形で、安全牌を持ちたい形だったと推察できる。そして、そのが出てきたということはテンパイ濃厚、丸山の手は高打点の可能性がある1シャンテンとは言えドラがなく、朝倉に高打点を決められる懸念もある。それを踏まえて、スピードを合わせにいったのだ。
結果としては朝倉のアガリだったが、丸山のピントが合っているのが分かる。
丸山は、東3局にはまた違った顔を見せた。微差のラス目で、10巡目に1シャンテン。1枚切れのをポンできればテンパイ、単騎待ちなら打点も確保できる。
だが、丸山は直後に太から切られたをスルーした。鳴いた後にリーチを受けたときに、待ちでどこまで戦えるのか。相手に持たれていたらアガリ目は薄い待ちということで、後の攻撃を警戒し、守備力を担保していたのだという。
丸山が危惧した通り、この局は太から先生のリーチがかかった。ドラはないがタンヤオピンフで、一発や裏が絡めば高打点になる。
リーチの一発目、丸山はを引いてテンパイするが、これをとらず切り。リャンメン待ちとは言え、親リーチに対してドラのを切っての片アガリテンパイでは、さすがにリスクとリターンが見合っていない。点差もそれほどついておらずまだ東場、焦る局面ではない、ということだ。
ただ、を落としていくなかでピンズが伸び、テンパイ復活。待ちはか単騎かを選べるが・・・
「リーチ」
丸山は単騎待ちでのリーチを選択。最初にドラを切らない選択をした以上、ここは打点を追って勝負をかける。巡目が進み、リーチ後に放銃抽選を受ける回数が減っていることも、選択を後押しした。
はなんと、山にまるまる残っていた。そして丸山が一発でツモり、2000-4000。守から攻へのシフトチェンジが見事に決まり、丸山が一気にトップ目へと浮上。
その後、一度は朝倉に逆転されるものの、東4局1本場には太のテンパイ打牌を捉えて再び満貫のアガリを決める。
試合は丸山vs朝倉、Mリーグを去ることになった者同士による対決の構図が色濃くなっていった。
そんななかで、興味深かったのが南2局。太が2巡目のポンから発進する。狙いは明確にマンズのホンイツ、役牌を重ねて打点を付けたいところ。
太はポンからソーズのリャンメンターツを外しており、狙いが一色手なのは丸山も当然分かっている。しかし、そこに対してをツモ切り。
太がチーして手を進める。これは、太に鳴かせてもいい、という進行である。丸山が太に対してマンズを切らないように進行すれば、丸山は手牌が制限され、太もチーが封じられる。親番を落とし、トップと3万点近い差がある小林は、すでに打点を作ることを余儀なくされている。
となると、自由に手を進められるのは2番手の朝倉のみ。そして、朝倉のアガリは丸山としても到底歓迎できない。というわけで、太にアガられてもやむを得ない、という形でマンズを切っていったのだ。
この局は最終的にリーチの朝倉の1人テンパイで終わるのだが、状況に適した進行をできているのが分かる。勝つために何をすべきか、彼女はそれを見失わず、別解を見つめ続けていた。
その後、丸山は太の親番を自力で蹴り、局はオーラスへ。
朝倉も粘りの1300オールで一度は丸山を逆転するも、
最後はアガれば勝ちの丸山が恵まれた手牌から速攻を決め、見事「骨肉の乱闘」を制した。
今回、改めて丸山の麻雀を見たが、正直に言ってMリーグで打っていたときとまるで違う印象を受けた。選択もそうだが、何よりその打ちっぷりだ。堂々として、自信と覚悟が伝わってくる姿に、彼女がこの1年で麻雀プロとしてまたさらに成長したことが伺える。
Mリーガーとしての日々も、そのあとに訪れた一介の麻雀プロとしての日々も、間違いなく彼女の血肉になっているのだろう。
だが、まだここは途中に過ぎない。