最後はやるかやられるか 4者激突、灼熱のオーラス 小林剛vs茅森早香vs渡辺太vs多井隆晴【Mリーグ2024-25観戦記 11/12 第1試合】担当記者 #東川亮

4着目の小林は満貫ツモで3着浮上という点数状況。小林の手にはドラ赤があり、逆転が見える材料はそろっていた。

各者が目的に向かって手を進めるなか、先制したのは多井。メンツ手とチートイツの1シャンテンからチートイツテンパイとなり、即リーチを敢行する。「親のリーチは魔法の言葉」、他ならぬ多井の言葉だ。

茅森も絶好のペン【7ソウ】引きでピンフテンパイ、偶然役が絡まなければリーチしてツモっても700-1300の手だが、多井が出したリーチ棒の分で太を逆転できるようになった。ツモか直撃で無条件、出アガリでも一発か裏1で逆転トップ。茅森は愚形テンパイだったら即リーチにはいかず様子見の構えだったそうだが、こうなれば勝負の構え。

さらに太もテンパイする。しかし待ちはカン【6ソウ】と決してよくはなく、出ていく【4ピン】は2人に両無スジの牌、つまり1牌で4スジ分を勝負することになる。

一方で、この手はオリようにも、そもそも2人共に通る現物がない。そして、オリていても茅森がアガればかなりの確率でトップ陥落、多井のアガリだと試合が続き、3着落ちすら視野に入るケースがあり得る。

あと1牌でアガってトップ、たとえ待ちが悪くても、そのチャンスは逃せない。

太、覚悟の【4ピン】プッシュ。こういうところはさすがだ。

次巡には【4ソウ】を引いてピンフに高目三色、何とダマテンハネ満の大物手に。打点の問題ではないが待ちが広がるのは大歓迎、もちろん【7ソウ】も押していく。

もはや誰がつかむか、という状況に、なんと小林も追いついた。3者に遅れながらも【6ソウ】【9ソウ】待ちでテンパイし、打点はピンフドラドラでリーチすれば満貫スタートで着アップは確定。どうせ放銃しても失うのは素点だけ、ここは【赤5マン】を横に曲げた。

全員がリターンを求め、リスクを負って前に出る、4者が完全にリングに乗ったバトルロイヤル。誰がどうアガっても局面は大きく変わる。

後は牌山のどこに何があるかの勝負、手に汗握るめくり合いは・・・

一瞬での決着となった。直後、茅森の手にあったのは最後の【9ソウ】

リーチ一発ピンフドラドラ、裏1のハネ満。

小林はこのアガリでラスからなんと2着まで浮上、逆に茅森はトップまで後一歩というところからラス落ちという、痛恨の結果になった。裏ドラ【7ソウ】は茅森にも乗っており、アガればトップだったという現実も、やむを得ないとはいえ厳しい。

緊迫の熱戦、余韻が漂う対局場がグリーンに染まる。勝ったのはドリブンズ・太だった。

 

その太に、Mリーグでは初めてとなる珍しいシーンがあった。

南2局2本場、手の内に1枚しかない【3マン】にポンの声をかけ、誤ポンでアガリ放棄に。

太の手には【3マン】が直前までトイツになっており、ポンして手を進められる形だった。そこから形を変えた直後の出来事で、とっさの頭の切り替えが追いついていなかったのだろう。

こういうヒューマンエラーはリアルだからこそ起こるもの。とはいえさすがに太も動揺したのか、直後には手が震えているようにも見えた。麻雀中はマシンのように正確無比な選択と押し引きをする太だが、彼もやはり我々と同じ人間。そんな当たり前の事実に、少し安心したような気持ちになった。

もちろん、一番ホッとしたのは太自身なのだろうけど。

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