を切っての
と
のシャンポン待ちに。
阿久津にこの時の待ち選択について聞いてみた。
「
を引いたらカン
にしようと思ったのですが、6巡目に松本さんが
を手出ししたことで
が固まっているおそれがあったことと、途中まで国士のような捨て牌の亜樹さんの国士が
の4枚切れにより否定されたので
と
のシャンポンは悪くないなと思いました」。
麻雀中だけ緊張せず入場とインタビューだけ緊張していたのかと思うほど明確でクリアな回答だった。
四暗刻単騎をアガれなくとも近いうちにスターになると感じさせるほど、正確な思考だ。
その結果。
リーチ、ツモ、ダブ
、ドラ1、赤2、裏1の倍満、8000は8200オールの強烈なアガリ。
麻雀の神様がいるとしたら、これまでストイックに麻雀一本でやってきた阿久津への初舞台の花を送ってくれたのかもしれない。
それほど、ずっと麻雀のことを考え、麻雀をやってきた。
それが今や中学生のころにプレーしていたゲームに自分が登場し、憧れの舞台で選手として画面の向こうに見ていたスターたちを圧倒している。
これまでの努力は「自分はいずれそうなる」と知っていないと続けられないような内容だ。
だからMリーグの初舞台でこんなに堂々打てるのだろう。
東3局3本場
親の倍満で5万点オーバーのトップに。
ただ相手はベテラン選手、どんな状況からも勝負を変えられる相手だ。
それをよく知っている阿久津は4巡目に攻めダルマ寿人の親番にも関わらず
と
のシャンポン待ちのリーチのみで牌を横に置く。
このとき阿久津は「早くてそこまで悪くないシャンポンだったので、フランクな感じでリーチ」をしたのだ。
この舞台で、しかも初陣で、フランクにリーチできるものだろうか。
何に緊張をしていたのかわからなくなってきた。
慣れないスタジオと入場シーンだろうか、見返したが足はちゃんとバラバラだったが少し怪しかった。
阿久津のリーチに全員が対応し、最後はオリ。
正直、ここはこんな新人に好き勝手させてたまるかと無謀であっても攻めてほしかったものだが、ここはMリーグ。そんな気持ちはみな持っていただろうが、背負うものが大きすぎるためそのような安易な選択はできないのだろう。
そして現物がなくなり、ノーチャンスの
を打った亜樹からロン。
勝利に向かい、しっかりと局を進めて行く。
南1局
阿久津は4着目で頑張りたい親の松本の立場や攻めてくる確率を正確に把握し、ダマテンでも役ありで
なら高目三色の![]()
![]()
をリーチ。
結果は狙い通り、テンパイから勝負してきた松本から高目の
を射止める。
リーチタンヤオピンフ三色ドラ、このハネ満でトップへとさらに突き進み、オーラスは寿人が点数の近い3着目で親の亜樹を交わす仕掛けを上がりきり2着を確保。
阿久津のデビュー戦は、文句なしの内容でトップとなった。
とある機会に、阿久津含む数名と麻雀を見ながら食事をしたことがあった。
阿久津は何度も同じ場面を巻き戻しては、こっちの選択肢があるのではと議論し、何年も上の先輩とも対等に意見を言っていた。
また阿久津は言語化に優れており、たとえ間違ったことであっても正しいと感じてしまうほど、納得感がある。
それはこれまでの努力の裏打ちでもあるだろうが、同じ麻雀プロで似ているなと感じた人がいた。
同じチームメンバーの堀慎吾だ。
堀とは阿久津ほどは親しくないが、同じく麻雀を一緒に見ながら会話をしたことがある。
彼らの言葉には説得力と納得感があり、すべて正解と思うのだ。
先にはっきりと言っておく。
今後、阿久津は間違いなく主力級の活躍をするだろう。
確実なのは最年少ながら実力と努力し続けられる才能を持つ、阿久津がMリーグの舞台で成長し、より強くなるということだ。
そんな阿久津の活躍を見て、感化され、目の前の仕事に努力する、そんなきっかけを与えてほしいと願っている。
もちろん私も含めてである。

日本プロ麻雀連盟所属、プロ歴2年目。
英語、イタリア語が話せる。
麻雀プロの活動を中心にするため大企業を退職し、京都に家族を置いて上京。
現在は日本プロ麻雀連盟本部道場でスタッフとして在籍中。
いつかは書かれる側を夢みておもろい麻雀と服装を実践中。
X:@taknakano















