新加入の最年少Mリーガー、
阿久津翔太は緊張しない?
文・中野巧【火曜担当ライター】2025年9月16日
第1試合
9月16日、大和証券Mリーグ開催2日目の試合が行われた。
対局メンバーはこちら
南家:阿久津翔太(KADOKAWAサクラナイツ)
西家:佐々木寿人(KONAMI麻雀格闘倶楽部)

先に答えを言うと、阿久津はかなり緊張していた。
所属の団体では最上位のA1に最年少で昇級し、時には一人で実況と解説を行う麻雀スーパーマンも緊張するのかと、2歳年上の私は少し安心した。

阿久津は前述したとおり放送の現場に慣れている。
また普段の彼はあまり緊張するタイプではないのだが、今日ばかりは違った。
理由は人生初めてのMリーグだから、といった部分もあるだろうがそれだけではない。
彼は同卓者3名が味わったことのないプレッシャーを感じていたのだ。
それは去年までサクラナイツの選手だった内川幸太郎(現EX風林火山所属)と嫌でも比べられてしまうプレッシャーだ。
そのため阿久津にこの試合への意気込みを聞いたところ、「サクラナイツの1勝目を勝ち取りたいのと、内川選手が抜け、自分が入ったということで実力を証明する必要があり、負けられない」と返事がきた。
そんな阿久津と対戦するのはMリーグ初年度から選手であった”魔王”佐々木寿人、新監督の二階堂亜樹、優勝経験のある松本吉弘といったベテランだ。
果たして新人:阿久津翔太は緊張しながらなれない舞台で彼らを前に結果を出せるのだろうか。
東1局1本場
この場面を見たとき、「ああ、いつも通り緊張してないのか」と思った。

手牌にドラが赤も含め3枚あり、現状を持っているためタンヤオにはならないが、急所の
が出た際にドラの在りかを気づかせない理牌をしていたのだ。
緊張から解放された阿久津にツモも応える。
純カラのカン待ちから
を引いてツモれば跳満の
待ちテンパイを即リーチ。

しかし、新人の勝負手にベテラン勢の寿人と亜樹が奇しくも同じ待ちで立ちはだかる。
まるで「新人・阿久津の好きにはさせない」といわんばかりに。

寿人は阿久津の現物であるドラの待ちだった。
しかしは危険牌であること、もし仮に
を切ると目立ってしまい、他家からドラは打たれないと判断しての
切りだった。

亜樹もカン待ちでリーチ。3人が
をめくり合う戦いに。
ベテランの壁は分厚い。
魔王が阿久津の現物でドラのを切ってまで止めた
をツモ。

滝沢和典選手兼監督はこの時、「初戦の選手はいろいろな選択肢がある中で寿人を起用した。この当たり牌をビタ止めしたうえでアガリきるプレーを見て、やっぱりこの男は頼りになるなと思い安心していた」という。
東2局1本場
ここまで手は入るがアガリが遠い阿久津だが、3巡目にタンヤオ三暗刻、一手替わり四暗刻単騎という9600点のテンパイが入る。

まさかMリーグ初試合で四暗刻単騎が出るのか。
もし阿久津がMリーグ初戦、しかも初アガリで四暗刻単騎をアガった日には、一気にスターダムへ駆け上がるだろう。

松本は以前には4年連続でプラス100を超えるスコアを持ち帰っていたのだが、昨シーズンは苦しい思いをした。
この局も本来は不要牌だったが他のターツが愚形であることから残し、狙い通りに
を引いて良い形になり、より真ん中で危険な
を打ったところ阿久津への放銃となってしまった。
東2局2本場
先ほどのアガリでトップとなり、親を連荘した阿久津にドラドラ赤のチャンス手が入る。
を切れば
と
のシャンポン待ち。
を切れば一通確定のカン
で打点も満貫が確定する。

阿久津の選択は早かった。