多井隆晴でも止められなかった 海の底で藻掻きながら それでも魅せた最速最強の矜持【Mリーグ2022-23観戦記2/10】担当記者:後藤哲冶

多井隆晴でも
止められなかった
海の底で藻掻きながら
それでも魅せた
最速最強の矜持

文・後藤哲冶【金曜担当ライター】2023年2月10日

『多井なら止めてた』
このワードを聞いたことのある人は多いのではないだろうか。

これは放送対局の際に誰かが放銃に回ってしまった時、コメント欄で散見される定型句のようなもの。
このワードが生まれた背景には、多井が長い麻雀人生の中で何度もスーパーセーブを繰り返し、このMリーグの舞台でも類まれな手組と押し引きで放銃を回避してきたという事実がある。

しかしこの日、多井はMリーグ史上初の一試合で2度のハイテイ放銃という不名誉な記録を作ってしまった。
多井ほどの打ち手であってもそんな悲劇に見舞われることがある。

それが麻雀の面白い所でもあり――恐ろしい所でもあるのだ。

2月10日 第2試合

東家 多井隆晴 (渋谷ABEMAS
南家 東城りお (セガサミーフェニックス
西家 鈴木たろう赤坂ドリブンズ
北家 二階堂瑠美EX風林火山

この日の東城は、まさに『りおカーニバル』と呼ぶに相応しい暴れっぷりだった。

東1局こそリーチツモピンフの700、1300で「あれ、今日は裏乗らない感じかな?」と思ったのも束の間。

東2局、リーチ一発ツモタンヤオドラ裏の強烈な6000オールで一気にリードを稼ぎ。

1本場ではカン【4マン】から仕掛けて2000オールのアガリで僅か3局で持ち点は5万点を突破。

2本場はたろうにかわされるも、続く東3局では

この形から

2連続でドラの【3ピン】を引いて【1ソウ】【4ソウ】【7ソウ】の3面張テンパイ。
いったい誰がこんな状態の東城を止められるというのか。

当然のように一発でツモアガリ、3000、6000。
まだ東場ではあるものの、大勢は決したと言っても過言ではないほどに、今日の東城は圧倒的だった。

そしてその嵐のような東城のアガリラッシュの中で、他3者は耐えていた。
ここまでに発生したアガリが全てツモアガリであることがそれを間接的に証明していた。

しかし東4局2本場
この局でこの試合初めての放銃が発生する。

多井の配牌がこれだ。
この第2試合、多井の配牌は総じて良くなかった。
誰にでもそういう半荘というのは訪れるものだが、多井が最強と言われる所以は、その苦しい手牌の捌き方にある。
この配牌も、先手をとれるかどうか微妙な手ではあるが、丁寧に手を組んでいく。

【2マン】を引いて、【7ピン】切り。
浮き牌としてはより内側の牌である【7ピン】の方が強いが、ドラが【1マン】であること、234の三色が見えることから多井は【7ピン】を切った。

次巡、【5ピン】を引いてイーシャンテン。
これでリャンメンと愚形フォローの形になったので、【2マン】をリリース。
供託もある2本場であり、現状ラス目であることも考えれば、先制テンパイならリーチにいきたい。

しかし先制リーチはまたしても東城だった。
愚形残り、ドラ赤無しのこの手では戦えない。現物の【9マン】の対子落としで手を崩す。

ドラの【1マン】を引いてきて、【9マン】を再びリリース。
【1マン】は今通った牌だが、その【1マン】を通した親の瑠美が押していることは明らか。
ここは瑠美に通っていない【9マン】を先に処理する。

案の定、瑠美からリーチが飛んできた。多井にとっては想定内だっただろう。
温存していた【1マン】をリリースし、そこから丁寧にオリていく。

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