丸山奏子、
大寒波に咲いた大輪の花丸
文・渡邉浩史郎【金曜担当ライター】2023年2月10日
第1試合
東家:丸山奏子(赤坂ドリブンズ)
南家:松本吉弘(渋谷ABEMAS)
西家:松ヶ瀬隆弥(EX風林火山)
北家:茅森早香(セガサミーフェニックス)
皆さんは最後に貰った花丸を覚えているだろうか。
祖父母から、両親から、先生から、祝福とエールを込めて贈られる花丸は、それだけで子供心を踊らせるに十分なものであった。
思えば幼いころは点数の多寡よりも貰えた花丸の大きさを誇っていたような気がする。
花丸に心躍らなくなったのはいつの日からだろうか。
本日一戦目に登場した丸山の髪には
小さな花が咲いていた。
いつもと違うヘアアクセサリーをつけての出場。ファンからの素朴な疑問の声に「これはお母さんからもらった髪飾りです」と丸山は笑顔で返した。
丸山の愛称、花まる子にかけての贈り物だろう。母から娘へ、精一杯の応援とともに贈られた花丸。
チームが負けている終盤戦、様々な声を小さい体にぶつけられながらも、母から贈られた花丸をその髪に、受け継いだ優しい笑顔で卓に座った。
丸山にチャンス手が入ったのは【東2局】。
一気通貫と三色の両天秤。がドラなだけに、本命は一気通貫に思えたが……
聴牌形は今一枚切られたカンと微妙な形。しかし丸山はリーチに踏み切った。
この手、ちょっと弱気になればとドラのを切っている茅森やまっすぐ手を進めているように見える松ヶ瀬・親の松本の押し返しを想像したり、ソウズの真ん中の情報が河に薄かったりといったネガティブな要素を勘案してダマテンにしてしまいそうだ。
しかし丸山は目の前の手牌に忠実に、リーチ+2飜役の打点的強み・リーチによる他家抑制・嬉しい手替わりの少なさを理由に、この手を躱し手ではなく勝負手とした。丸山らしい、強気のリーチといえよう。
茅森のリーチを受けるも、引いてきたのは花丸色の!
マンガンのツモアガリで半歩リードとなった。
次局も跳満クラスの手を仕上げる。勝負を決めに行くべく、親リーの松ヶ瀬とソウズのホンイツの松本にぶつけに行くが……
ここは松本が待ったをかける。丸山から・ホンイツの5200のアガリとなった。
唇をかみしめるも、ここは悔いなし。東3局の34000点持ちトップ目なんて紙よりも薄いリードは守るべきではなく広げるものだ。そんな強気な丸山が見て取れよう。
失った点棒はすぐに取り戻す。二度目の花丸色のツモはマンズのホンイツ。再びのマンガンの加点でスピーディーに南場に突入した。
突然だが、皆さまは左脳と右脳の役割の違いをご存じだろうか。
一般的に、左脳は分析的・論理的な思考を担当し、右脳は感覚的・直観的な思考を担当すると言われている。
頭脳ゲームである麻雀において、選択とはこの両者の間でのせめぎ合いであることが多い。丸山のチームメイトである村上淳はこのことを「冷静と情熱の間」と表現した。
【南1局】、丸山も「冷静と情熱の間」で揺れ動く。
丸山はこの形から打として安全牌のを残した。
今までとは状況が変わり、「南場」の「トップ目」となった丸山。
を切って目一杯にしたほうが得なのは百も承知だが、「トップ目」が「二段目に入って誰に対しての安牌も持てていない状況」を危ういと見た。
7700~12000級の手だけは逃さないという舵取り。ここは強気の丸山から守備重視へとシフトチェンジ。
しかし結果この手が赤1ピンフの先制聴牌を取れたとなれば話は変わる。カンも入り、リーチの一手だろう。
「冷静と情熱の間」を乗りこなした丸山、ドラツモに裏ドラ一枚を乗っけての親跳満ツモ!
リードを確固たるものに築き上げた!
少ない失点で親を落とした後の【南3局】では本人曰く、「勢い余った」情熱の役ありリーチ。しかしそれもチーム状況的には大事な素点の加点となる5200のアガリ。
その後は「冷静」な立ち回り。【南4局】、親の茅森のソウズ仕掛けに三面張聴牌からしっかり回ることで後の放銃を回避。
最後は下家の松本に跳満まで打てる点差をつけていたことでストレートにアシスト。