氷がむなしくカランと鳴るが、とても追加のドリンクを頼める状況ではない。店内はみな、画面に釘付けとなっていた。
下石も勝又もツモ切り。無スジを勝負する下石。
喉の乾きも忘れ、私は息を呑んで画面を見つめた。
鬼神・下石。軍師・勝又。
この局を制するのは、どちらなのか――。

決着は、2巡後だった。
勝又がドラのを掴み、下石に放銃。
赤赤ドラの2本場、8600点。
このアガリで、下石はトップ目の萩原に300点差まで迫る。
そして南3局。

なんと下石は1巡目にしてイーシャンテン。
へのくっつきでタンヤオにも移行できる、いい形だ。

3巡目にを引いてテンパイした下石は、
切りでリーチを打つ。
待ちはと
のシャンポン待ち。リーチのみだが、
は出やすい。
今回も下石がアガるのか?
萩原は2巡に渡りを止めていたが、ついに切った。
下石からロンの声がかかる。

裏ドラをめくると、が姿を見せ……ということは、裏ドラは
!
リーチ裏3、8000点を萩原から直撃した下石が、ここでトップ目に立った。
残すはオーラス、南4局のみ。
跳満ツモか満貫直撃が必要な萩原は、あくまでトップを狙う手組みを見せ、着順アップを狙うラス目の勝又は目いっぱいに構える。岡田は苦しい。

9巡目に、勝又がを引いてテンパイする。
カンかカン
の選択だが、勝又は
を切りカン
待ちでリーチを打つ。
一発ツモかツモ裏1、もしくはツモなら、3着になる。

は赤含みで萩原に暗刻だが、14巡目に最後の
をツモ。
が裏ドラとなり、リーチツモドラ赤裏、2000・4000のアガリで勝又は3着に。
最後まで見せ場のある、素晴らしい試合だった。

本日のゲームスタッツはこちらの通り。
下石の和了回数2回、そして放銃回数0という数字が光る。
東場は我慢に我慢を重ね、南場で満貫2連発と弾けた、見事なトップだ。

この勝利でBEAST Ⅹはトータルポイントがプラスに、チームランキングは6位に浮上した。
下石は、試合後のインタビューでも萩原との掛け合いで楽しませてくれた。
店内も大いに沸き、私もついつい杯を重ねてしまった。
麻雀BARで観戦を楽しみ、初めて会った人たちとの会話も弾んだ。
Mリーグがスポーツとして根づいていることを実感した、秋の夜長であった。

アラフィフ場末雀士。
小説や漫画原作を書いてはボツを繰り返すワナビ。
X:@zantetsusen
note:https://note.com/hagane_5800