てにしあわせを、不死鳥の復活劇──醍醐大と渡辺太の明暗分けた一巡──【Mリーグ2025-26 レギュラーシーズン 観戦記 10/24 第2試合(麻雀チャンネル)】担当記者 小林正和

その時のうなだれる姿が、この一戦に懸ける想いを何よりも物語っていた。

(今日もダメなのか…)

そんな心の声が、画面越しにまで響いてくるように。

だが、今日は少しだけ違った。

その流れを断ち切るように、どこからか小さな風が吹いたのである。

 

本日10月24日。

「て(10)に(2)しあわせ(4)」という語呂合わせから、この日は“文鳥の日”と呼ばれているらしい。

 

フェニックスにとって、その幸福を運ぶ小さな不死鳥が、そっと手のひらに乗ったのは東3局であった。

好配牌から数巡後、その形は静かに整い、やがて一気に羽ばたく。

“てにしあわせを”

まるで、眠っていた不死鳥が再び大きな翼を広げるかのような、力強いマンガンのツモアガリだ。

(とにかく今日は幸運でもいい…。)

まさかの“流れの反転”。

長く続いた重い雲の隙間から、ようやく一筋の光が差し込む。

フェニックス、醍醐大が静かにリードを奪い、南場へと突き進んでいった。

 

一方で、試合後に“いつもと違う”感情の揺らぎを見せていた者がいた。

それは、麻雀AIの学習モデルにもなっている、渡辺太である。

「この局はアガリたすぎてダメでしたねー。」

そう振り返ったのは東4局

点況はフラット。

迎えた親番で、太の手にはドラが対子、さらに赤牌が1枚。形もそこそこ整っている。

悪い点を挙げるとすれば、すでに巡目が終盤に差し掛かっていたことくらいだ。

16巡目。

太は【5マン】のチーテンを取らなかった。いや、取れなかったのかもしれない。卓上では北家・東城がリーチをかけていたのである。

渡辺太

「リーチの有無は関係ないですね。【9ソウ】切りのところで少考が入っていたので、単純【5ソウ】【8ソウ】ターツは無さそうという読みでした。

頭の中では“チーして【8ソウ】切りテンパイ”を取ろうと思ってたんですが、ワンチャンまだアガれるかなって。鼻息フンフンしちゃってましたね(笑)。この半荘の中では、大きなミスの一つです。」

ネット界隈では最高峰の雀士の一人として名を馳せる“ふとっしー”こと太。

データや確率に裏づけられた“平面の情報”だけでなく、こうしたリアルの卓上でしか拾えない“わずかな気配”を読み取る。

そして、それを自然に判断材料へと組み込めるのは、まさに流石の一言である。

ただし、この時の判断はAIには再現できない、人間らしい“欲”だったのかもしれない。

 

更に、振り返り配信で感情をにじませたのが南2局

「あー【8マン】!うー【9ソウ】!!動じてます(笑)べっ、べつに、悔しくなんか(笑)」

 

この局の始まりは

勝又の【南】の一鳴きから。

ここで点数状況をご覧いただきたい。

ラス目とはいえ、トップとはマンガンツモ一回分の差。そして、まだ一段目。人ならば、一枚目はスルーしたくなるだろう。

だが、勝又は迷わず鳴いた。そうさせたのは…

この太の打点もスピードも待ちの良さも約束された、こちらの手牌の存在である。

ドラの【白】リリースはもちろん、【6ピン】➡︎【8ピン】の内切りターツ払いの捨て牌に注視。そして、この局は“間に合ってない”と判断すると、かわし手にシフトチェンジしたのである。

これは勝又が著した新著の名を借りるならば、まさに“軍師の兵法”。

結果的にではあるが、

太にテンパイの入る【8マン】を食い上げると、

一発ツモの【9ソウ】を、まるで見せつけるかのように静かにツモ切る。

そして、【南】・赤

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