月日は百代の過客にして〜行きかう牌に選ばれた下石戟【麻雀最強戦2026 団体分裂合戦】観戦記【決勝卓】文:千嶋辰治

結果論と言われればそれまでだが、東1局、そして東2局ともにアガリの道があった瀬戸熊が、
その両方を逃した代償は大きかったと言える。
両局ともに、あるいはどちらかだけでもアガリにたどり着いていれば、次に述べる局の結末も違っていたのかもしれない。

・瀬戸熊と宮崎、意地のめくり合い。そして結末は…

トップ目の下石から4番手の宮崎和樹まで12,100差。
満貫一発で情勢が変わる接戦のまま迎えた南2局、ドラは【6ピン】。
3巡目、

ここまで目立った出番がなかった宮崎、場風の【南】を仕掛けていく。

次巡、首尾よくドラの【6ピン】を引き入れて打点上昇。
さらに、

自風の【西】も鳴けて理想的な満貫のイーシャンテンも、これがすんなりとはいかない。
先にテンパイを入れたのは瀬戸熊だった。

北家の瀬戸熊、4枚目の【北】を持ってきてこれをカン。

【4ピン】をカンドラに乗せ、リンシャンから【2ピン】をツモってテンパイ。
もちろんここは流れるようにリーチを放った。
対する宮崎、

下石からこぼれた瀬戸熊の現物である【7マン】をチーして待望のテンパイ。
自身の目から4枚見えているも、瀬戸熊の現物である【6ソウ】【9ソウ】に命運を託した。

この局の結末でどちらかの最強戦が終わる。
ただならぬ緊張感が視聴者にも十分に伝わったことだろう。

果たして、その結末は。

瀬戸熊が【9ソウ】を掴む!

宮崎が辛くもめくり合いに勝ち、【南】【西】ドラ2の8,000点をものにした。
これにより瀬戸熊はさらに厳しい状況へ。
結果的にオーラスでハネ満条件は残ったものの、この局で宮崎にしっかり「斬られた」事実はかなり大きかったと言えよう。

・勝負は最後に手を倒せるか否か

迎えたオーラス。
トップ目は下石で30,500、2番手の宮崎は4,100差で親番、3番手の河野は7,300差で接戦模様となった。

こんな時、勝つ者は必ず手を入れる。
これが勝った人に偶然に入るものなのか、強いから手を入れられるのかはわからない。
人それぞれの宗教観によっても捉え方は違うだろう。

ただ一つ言えることは、

今日の下石戟が、私の目には牌に「勝て」と選ばれたように映った。

どこから仕掛けてもいい軽い手が入った下石。
道中、親の宮崎からリーチが入るも、

怯むことなく押し切ってゲームセット。
序盤から内容が良く、ゲームのターニングポイントをきっちりと締めた下石がファイナルの切符を手に入れた。

月日は百代の過客にして行かふ年も又旅人也。

松尾芭蕉は「奥の細道」の序文にて、時間というものは決して止まらず、絶えず始まりと終わりを繰り返すと書いた。

それを麻雀になぞらえれば、手を伸ばした配牌が1巡ごとに姿を変え、やがて局が終わればまた伏せられて壁牌へと戻っていく…そんなものだろうか。
ならば私たち打ち手は、牌が行きかう間にたまたま旅の伴として選ばれただけの存在。
実に小さなものであるということを感じる。
もしかしたら、我々が紡いできた数十年に及ぶ分裂と闘争の歴史もまた、卓上の牌から見れば長い歴史のたった一幕に過ぎないのかもしれない。

冒頭に示した書籍に示された「もめ続けた50年」。
そのうち30年を眺めてきた者として、今日のカテゴリは一際感慨深いものだった。
そして、その戦いを制したのが次代を担うであろう下石戟だったということもまた、味わい深いものだった。

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