麻雀最強戦2019男子プレミアトーナメント「空中決戦」ZERO特別自戦記

鬼の形相で場を見つめを打つ。

この局の苦悶の表情が印象的だったとの声を多くいただいたが、こんなに顔を抜かれているとは知らず、カメラワークの素晴らしさを後から見て知った。

1つの対局の価値を極限まで高めるために、どれだけ多くの人が携わっていることか。

裏方さんに感謝し、あらためて幸せを実感する。

そして次にツモってきたのは

だった。

先ほどと違って、2筋勝負する必要があることがネックだ。

私も迷いに迷った。

どこかでリスクを背負って前に出ないと、こういう短期決戦で頂点に立つことはなかなかできない。それは今なのか、それとも…

私はほぼほぼ通ると思っていたを抜いた。

やはり園田プロのアガリは展開的に悪くないのだ。

カンまでしておいて、は押しておいて、安全牌がないのに、オリる。

ともすれば周りからは中途半端に見えたかもしれないが、私からするとその場その場で最善を尽くしているつもりだ。

結果的にあとのない石川プロが園田プロにマンガンを放銃し…

このような点差になった。

園田賢 26500

ZERO 27400

石川遼 16400

蛯原朗 29700

トップの蛯原プロまで2300点。

蛯原プロもノーテンが許されず、さらにアガリヤメもない状況。かなり苦しいはずだ。

このオーラスは一生忘れられないだろう。

私は

このような配牌から順調にタンヤオ牌をかき集め、6巡目には

こんなイーシャンテンになっていた。

そこへ上家の園田プロからが打たれる。

ここは鳴こうかどうか迷っていた部分だ。

現在カンチャン2種受けのイーシャンテン。

をチーすると…

 チー

の6種受けに増える。

園田プロも前に出てくる局面なので、チーして絞られるというデメリットは薄いだろう。

これだけ考えるとチーした方が良さそうなのだが、点差が2300点なので鳴くとツモ直条件が発生してしまう。

さらにメンゼンのままでも受けの広がるツモは10種類以上存在する。

私は迷った末に

カンチャン2つの手ごたえが全くないことを理由にチーに踏み切った。

その後、私の有効牌は下家に流れ、テンパイすることさえできず…

蛯原プロの6000オールが生まれてしまった。

 

先ほどまで幸せな場所にいて、頂点に手が届きそうだったのに、いきなり足元が崩れ落ち、真っ暗な闇に吸い込まれてしまった…そんな、感覚。

遠のきそうになる意識をなんとか戻し、条件を再度確認すると、逆転には三倍満以上のツモアガリが必要だった。

オーラス、形作りの役満を狙っているときにようやく思考から解放され、緊張感が抜けていくのを感じた。

「ああ…もう終わっちゃうんだな…」

静寂の中、一挙手一投足を拾うように聞こえてくるカメラのシャッター音。

上家にはモニター越しで何度もみたMリーガー、園田賢

幸せな時間は長く続かなかった。

麻雀は残酷だ。

1人の勝者のために何千人といる敗者全員が辛い思いを経験する。

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