現在戦っている女流雀王戦では、さらにいい麻雀を見せてくれるに違いない。
小島さんには、現実的に勝ちへのルートを選べるタイミングがあった。
もし、チートイツを単騎で待てていたら。
もし、を抑えてカンに受けられていたら。
しかし、そんな「たられば」を言っても意味がないことを、ここまで勝ち上がった、そして麻雀を愛した在野の勝負師は知っている。
彼はこの試合について「楽しかった、後悔はないです」と語った。
話を聞いているときの真っ直ぐな目線は、紛れもなく、やりきった男のものだった。
■B卓
著名人代表 加藤哲郎
男子プロ代表 白鳥翔
男子プロ代表 金子正輝
RTDトーナメント 佐々木寿人
Mリーガー2名にレジェンド、そして元プロ野球選手として有名な関西アマチュアの強豪がそろったB卓。
強面な雰囲気の加藤さんは、非常に柔和で話しやすい方だった。
最強位への思いを非常に強く持ちつつ、「欲しいからもらえるものではないので、うまくやれることをやっていきたいと思っています」と冷静さも忘れない。
プロ野球選手としての加藤さんを語るのに外せない、あの日本シリーズが行われたのは1989年。
くしくも、麻雀最強戦創設の年である。
「チーム戦とはまた違うけど、日本一は気分がいいと思うので、ぜひなってみたい」
その言葉には、思いや闘志がにじんでいた。
白鳥プロは、Mリーグ関連で話を聞くことが多い選手だ。
この日も、彼の様子は普段と変わらないように見えた。
「もちろん勝ちたい気持ちはすごくありますけど、冷静な気持ちも一緒にあっていい感じです。そこは、最近のいろいろな対局を熟して成長できている部分だと思います」
ちなみに、彼が入場のときに振っていた鈴は、Mリーグ・渋谷ABEMASの仲間が買ったものだ。
控え室で仲間がこれを振った結果、チームは好調。
その御利益に預かって借りてきたものである。
普段と変わらないと言えば、この男もそうだ。
佐々木プロと直接話をするのは初めてだが、映像などでよく見る雰囲気そのままの人物がそこにいた。
ただ、最強戦へかける思いは強いという。
「5年ぶりの出場なんですけど、そのときは藤田社長が優勝した回で、自分はオーラスのアガリ勝負で藤田さんに負けました。その分、かける思いは強いですね」
あまり時間は取れなかったが、短い言葉の端々から、最強位への意欲が伝わってきた。
Mリーガー2人に著名人が集まる卓で、大ベテランである金子プロに期待をしていた方も多いだろう。
30年目にして初めてのファイナル進出。
「せっかくこういう舞台に立てるんで、精いっぱい打ちたいと思っています」
と、ベテランながら初々しい気持ちを語ってくれた。
また、
「みんな打ち盛りなので、同じ舞台で戦えるのはうれしい」
と、若い世代との激突を楽しみにしている様子も印象的だった。
「今まで麻雀プロになって40年たつが、それを全部出し切れれば優勝できるんじゃないかと思う。金子の麻雀を見てもらいたい」
B卓は「金子対白鳥」の構図となり、佐々木としてはどうにもならない試合になってしまったように思う。
「東1局1本場で突っ込む手があったかもしれないですけど、それくらいですね」
佐々木プロはごく簡潔に、試合を振り返った。
もちろん悔しさはあるはずだが、こうした敗戦を、彼は幾度となく経験してきたはずだ。
いい意味で引きずらないようにしている姿勢にも、プロらしさを感じるところがあった。
加藤さんは、序盤でリードを得ながらも他の2人のツモに巻き込まれて敗退。
ただ、
「やったんじゃないですか。失敗らしい失敗はないんで」
と、試合をポジティブに振り返っていた。
「来年、またチャンスがあれば頑張りたい」
そう言って、加藤さんは会場を後にした。
惜しいところまでいった白鳥プロだったが、金子プロには一歩及ばず。
裏3をツモったハネ満については、
「自分が思っているように打てて、ああいうところを捉えられたのが、成長した部分だと思います」
と手応えを感じたようだったが、ターツ選択の部分での反省もあったようだ。
試合後は、解説を務めた魚谷侑未プロと意見交換を行っていた。
金子プロに関しては、観戦記でも触れた通り。
筆者も、あの止めがこの試合の勝因になったと感じている。
また、加藤さんに2600を放銃した場面も