何と85パーセントもあるというのだ。
通常5割を超えればいい方であるというリーチ成功率がこの数字というのは、まさに脅威。
藤崎はリーチに踏み込む回数こそMリーグで29人中29位なのだが、ひとたびリーチを打てば超高確率でアガリをものにする。
それは、いわゆる「アガれる待ち」をしっかりと作っていることの証だ。
リーチをすれば防御力はゼロになるが、藤崎がリーチを打つ以上は、彼の中に相応の勝算がある、ということなのだろう。
できる限りリスクを避けつつ、チャンスとみれば大胆に仕掛けて任務を確実に遂行する。
我々のイメージする「忍者」さながらの打ち回しである。
東3局。
12巡目にテンパイ一番乗りを果たした藤崎だが、親とは言えこんなカン待ちではリーチをしない。
タンヤオという役を生かし、他3者をケアしつつ静かにアガリを取りに行くのだ。
このあたりのしたたかさも、「忍者」らしい。
東3局1本場や南1局でも、藤崎の守備意識の高さが見られた。
この2局では、藤崎は真ん中の牌から切り出していっている。
これは普通に手を進めてもアガリは遠いことから、守備にまわる局面を見越して最初から危なそうな牌を切って安全牌を抱えつつ、もし手が伸びるならチャンタやジュンチャン、国士無双などの大物手を狙おう、という考えだ。
とはいえ、まわりも一流の打ち手ばかり。
南2局1本場では2着目のたろうが藤崎から直撃を取り、たろうがトップで藤崎の親番を迎えた。
南3局。
藤崎は6巡目にカン待ちのテンパイとなるが・・・
これを取らない。
捨て牌1段目、ドラも1枚あるということで、この形で親リーチを打って他3者の足を止めようという打ち手もいるかもしれないが、それをしないのが藤崎だ。
一方、その裏でチンイツへと手を進めていた小林がをポン。
直後、藤崎がすかさずの形からを打ち、ソーズの形をスリムにした。
次巡、小林がソーズのリャンメンチーでカンテンパイ、もし一巡遅れていたらが捕まっていたところだった。
すんでのところで危険を回避する様は、まさに時代劇に出てくる忍者のよう。
危険を回避したなら、あとはミッションを遂行するだけだ。
待ちでリーチを打ち・・・
またしても一発ツモ。
藤崎はこの試合で2回リーチを打ったのだが、リーチ後に牌をツモった回数は合計でわずか2回。
リーチ成功率どころか一発ツモ率まで100パーセントである。
さすがにこれはできすぎではあるが、藤崎のリーチは、今後のMリーグの大きな見どころにもなってきそうだ。
オーラスは親の沢崎がさすがの粘りを見せるも、最後は藤崎に軽い手が入り、自力でフィニッシュ。
初戦の寿人に続いてトップを獲得し、チームポイントもプラス域に戻した。
藤崎は、シーズン当初はどうにも先手を奪えず、なかなかトップが取れない展開が続いた。
これは、彼のじっくりと手を構えるスタイルから後手に回らされるケースが多かった、というのが要因の一つとして挙げられるだろう。
しかし厳しい状況でも安易な勝負に出ずに失点を防いできたことが、ここまで12戦打って4着なし、プラス86.9pという結果に表れている。
ここから先は、1戦1戦にかかる比重が徐々に重くなってくる。
鋭い切り込みや手数の多さなど、攻撃に特徴を持つ選手が多いKONAMI麻雀格闘倶楽部にあって、藤崎のような打ち手の存在は、チームに確かな安定感をもたらしていくはずだ。
さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。