熱論!Mリーグ【Mon】
生き残りを賭けた最終戦…
運命を託された
石橋伸洋と瀬戸熊直樹の
息詰まる死闘
文・山﨑和也【月曜担当ライター】2020年3月30日
セミ・ファイナルシリーズはついに最終盤に突入。もうすぐ4月とは時間の速さを感じるばかりだ。Piratesと雷電は本日の2戦を持って一足先に日程を終了する。両チームとも最後の正念場を迎えていた。
ボーダーラインに2チームが並んでいるのだ。現在4位はPirates。5位との雷電の差は約100ポイント。点数上は差があるように見えるが、ここまでご覧の方はお分かりの通り、簡単にひっくり返るので油断はならない。直接対決とあっては尚更だ。
チームを任されたのは絶好調石橋伸洋。レギュラーシーズンでは振るわなかったが、じっくりと力を蓄えており、トータルポイントは堂々の1位。彼の登板に異論の声はないだろう。ここまでチームは決して順風満帆ではなく、誰が船酔いしたときは誰かが背中をさするといった感じで本調子とは思えなかった。ただ石橋の活躍により、ピースが埋まった感を受けた。全員が調子を取り戻せばナンバーワンも見えてくる。
雷電はエース瀬戸熊直樹が登板。チームが逆境を迎えるにつれて、筆者はどんどん瀬戸熊の魅力に取りつかれている。3月26日の試合では痺れた。真中彰司さんが書かれた記事によると『トルネードツモ」というらしいのだが、それが出たのである。筆者はリアルタイムで見ていたときに「かっけえーーー」と絶叫してしまった。あのシーンはオーバーヘッド、バット投げホームランに匹敵した。そう、雷電の麻雀は面白いし、かっこいい。
……結論としてはどっちも勝ってほしい。レギュラーシーズンの終盤でも書いたが、やはりどのチームにも欠けてほしくないのである。しかし泣いても笑ってもどちらかは脱落する運命にある。この日の1戦目、筆者はできる限りフラットな視線を心がけた。それでもフェニックスとABEMASをややおろそかにしてしまった。どうかお許しいただきたい。
1戦目
東家 近藤誠一(セガサミーフェニックス)
北家 石橋伸洋(U-NEXTパイレーツ)
東1局。幸先よいスタートを切ったのは石橋だった。を引いてテンパイだが、とのどちらを切るか。
ここはドラを切って両面待ちに取った。でアガれば一気通貫でドラを手放してもお釣りがくる。
安目のをツモったのだが、なんと裏が乗った。これで3000―6000のアガりとなり、大きなリードを奪う。雷電は苦しいスタートとなった。
東2局は瀬戸熊の親番。もう1回も無駄にはしたくないところではあったが、近藤がいきなりのテンパイ。待ちでダブルリーチをかけた。瀬戸熊は苦しい。
石橋にもドラ3の手が入っていた。この手格好ではほかに安全牌もないのでを切るよりないところ。
2600の放銃となったが、最小限に抑えたので依然として大きなリードを保つ。瀬戸熊は親が流れたのが痛かった。
東3局1本場は石橋の手順が冴え渡った。まずはをポン。石橋としてはもはや局を進めることに価値があるので、たとえ安い手でも積極的に仕掛けていける。
このあとも鳴けて形が整ってきた。ではなくから切ったのが細かいポイント。
索子を次々と河に放していき、なんとなく筒子の染め手に見えてこないだろうか。ではなくを先に切ったのも工夫だ。
こうしてが出やすくなったので狙い通りポンできた。しかも最終手出しが七。これで萬子が関連している線も浮上し、待ちがぼやけている。
この効果で親の白鳥を止めることに成功している。白鳥の手にはがあるのだが、石橋に当たると対々和が絡むことになるので打ちづらいのだ。
カンチャンが埋まるものの、ここでを切って形を崩す。まだしものほうがと思うが、やはり当たったときに痛い。近藤と瀬戸熊も警戒し、引き気味に対応に回った。石橋としてはしてやったり。ひとりテンパイになればアガるより大きい。
全員が引いているのを見計らってか、を持ってきて石橋はカンをした。いまこの場は自分が支配している、まさにキングのカン。実況・解説席が湧き立つ。
「新ドラ乗ったよ!」と解説の金太賢プロも興奮気味。これで対々和ではなくとも打点が十分になった。
をツモり、1300―2600は1400―2700のアガりとなった。絶好調石橋の技ありの一局。仮に1000点のみでアガっていたとしても拍手喝采だっただろう。
南2局に移る。瀬戸熊は南場の親番を迎え、いよいよあとがなくなった。この局を逃すとトップの石橋との約2万点をひっくり返すのは厳しくなる。上図は七対子かバックでいくかという手牌。ただ、親の七対子は頼りにしづらい面もある。
は近藤の手に対子だった。
圧倒的に有利だったのは石橋だ。を切っているのが気になるが、ここはを切ってダマテン。萬子よりも索子の好形変化を見た。