抗え、最後の1牌まで
あらゆる逆境をはね除けて、
黒沢咲は希望を紡ぐ
文・東川亮【木曜担当ライター】2021年3月11日
やはり、立ちはだかったのは佐々木寿人だった。
一発ツモ、裏3での倍満。
魔王と称される男の繰り出した人知の及ばぬ一撃に、TEAM雷電・瀬戸熊直樹はどうすることもできないまま敗れた。
神、あるいは天命と呼ばれるものが、雷電ではなくKONAMI麻雀格闘倶楽部を選んだ。
第1回戦の決着に、そんなことすら頭をよぎる。
だからといって、諦めていいはずがない。
たとえ全てが敵になったとしても、TEAM雷電は最後の1牌まで戦う。
大和証券Mリーグ2020・レギュラーシーズン最終戦。
必勝を期した一戦に臨んだのは、チームの勝ち頭、黒沢咲だった。
たおやかな双肩には、雷電ユニバース全ての思いが乗っている。
第2回戦
南家:前原雄大(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
トップが至上命題の一戦、最初の親番の手牌からは、ダブホンイツがはっきりと見える。
ここで満貫クラスのアガリを決められれば、一気に道は開けるだろう。
そんな好配牌をもらいながら、まさか園田から3巡目にリーチが飛んでこようとは。
しかも待ちはの3メンチャンで山に9枚残り、高目ツモでハネ満からという大物手。
今の雷電を象徴するかのような逆境、雷電ユニバースとしては、思わず呪いの言葉の一つでも吐きたくなる展開だ。
字牌を切って粘るが、を引いて手が止まる。
現物としてはがあるが、これを打てば自身のアガリからは大きく遠のくため、現状を考えれば選びたくない。
とは言え、ホンイツでの満貫を狙うとなると右にあるソーズ・マンズを切り飛ばさなくてはいけない。
黒沢はに手をかけた。
全く通っていないマンズに手をかけるくらいなら、ということかもしれないが、いずれにしても「まだマシ」くらいの比較だ。
そして、今後引く牌によっては園田への放銃が待っている。
しかし、を重ねて潮目が変わった。
七対子のイーシャンテンになり、打。
2枚見えで七対子には使いにくいが、当たったときはほぼドラまたぎとリスクのある牌だ。
黒沢の、強気の姿勢が見える。
そしてテンパイ。
配牌からは予想もつかない形だ。
この時点で山にはが3枚、が2枚残っていた。
なぜ、黒沢はすぐにツモるを選べたのだろうか。
ヤミテンに構えていたので、その後の受けなどを考えてのことだったかもしれない。
しかし、今大事なのは「この手をアガって、園田の大物手を蹴った」という結果。
苦しくても、諦めない限り最後まで勝負は分からない。
それはこの試合も、レギュラーシーズンも一緒だ。
東2局には先制リーチをうち、大物手をテンパイしていた亜樹から出アガリして8000。
大きな加点に成功する。