村上淳の
真骨頂は
アガれない
局にあり!
熱きデジタル、
涙の完全復活!
文・ZERO【火曜担当ライター】2021年11月9日
村上の4トビという不名誉な記録に、ファンやチームメイトだけに留まらず、業界内外の多くの方面からフォローの声が集まっていた。
実は、多くの激励・同情が集まる中、私は羨ましいな…と感じていた。
たしかに4トビはそうそうない逆境と言えるだろう。実力者の村上だからこそ、なおさら不幸が際立って見える。
しかし麻雀は悲しいくらいに平等である。打っていればこれに近い不幸、これより長い不幸だって誰にでも経験するものだ。
大抵は雀荘の片隅で、その場に居合わせたもの以外誰にも知られることなく、ひっそりとなんの前触れもなく逆境は訪れる。
波立つ心を沈めながら、あるいは沈む気持ちを奮い立たせながら、独りでただただ逆境を受け入れるしかないのだ。
その点Mリーグでは逆境を万人が見てくれ、同じように悲しんでくれる。
そして万人が期待して見守る。
人が逆境から立ち上がる瞬間を。
東2局 自分と重なる小三元
開局の親が流れた直後だった。
村上の配牌↓
松嶋「形がかなりきついですね…」
村上はここからを切った。
普通の進行は見切り、国士やチャンタなど遅くて高い手になったときだけ攻め返す方針である。
7巡目でこう。↓
1メンツ完成したものの、とてもじゃないけど戦えない。
村上「大体ベタオリになると思っていた」
と本人も語っている。
しかし麻雀は本当にわからないものだ。
村上ほどの男が4トビを喰らうのと同じように、この手牌が
小三元・チャンタ・ドラ1という華麗なハネマンに仕上がる。
「30006000」
申告する村上の声がいつもより上ずっているように聞こえた。
これまでの麻雀人生の中でも多くの不幸を経験してきた村上が、たった1つのアガリに感極まっているのだ。
目が腐るほどの悪い配牌から仕上がったハネマンに、絶不調から復活しようとする自分を重ねたのかもしれない。
一瞬先の未来ですら、誰も予測できない。
それでも自分の持てる全てを賭ける者達がいる。
だからこそ、麻雀は面白い。
さて、このハネマンを大きく感動的に取り上げることもできたが、村上の真骨頂はこのアガリにはない。続きを見ていこう。
東3局 冷静か弱気か
村上は11巡目にテンパイを入れた。↓
赤を持っての待ち。場を見るとは絶好に見える。
上家の高宮から先制リーチが入っているが、リーチ超人と呼ばれる村上は当然…
ダマに構えた。
弱気じゃない? そう感じた人も多いと思う。
村上は高宮のリーチだけでなく、親の岡田の仕掛けも意識したのだ。↓
対面の岡田はマンズのホンイツが本命で、が余っていてテンパイ濃厚である。あるいはドラを抱えての仕掛けかもしれないが、テンパイ濃厚であることには変わりない。
また高打点志向である東城が役牌を一鳴きでポンしているところにも注意したい。
つまりこの場面は2軒リーチや3軒リーチに相当するということだ。
そして村上は数巡の間、岡田や東城の動向を探る腹だったのではないか。特に岡田はホンイツのテンパイならオリないとは思うが、もし回ったようなそぶりを見せたらそこでリーチを打つ選択もあったのだろう。(そのときにはの濃度も上がっていて、より一発に期待できる。)
出るにロンできないのは痛いが、ツモってくるマンズの無筋を切りたくない。
そしてラス目の高宮がアガる分には…