“河の神”
赤坂ドリブンズ 鈴木たろうが
作り上げた 一牌の後先
文・ゆうせー【木曜担当ライター】2022年1月20日
いよいよレギュラーシーズンも残り3分の1。
セミファイナル進出ボーダーラインの6位をめぐって、各チーム「負けられない」戦いが続く。
1試合目は、
東家:滝沢和典(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
南家:近藤誠一(セガサミーフェニックス)
西家:松ヶ瀬隆弥(EX風林火山)
北家:鈴木たろう(赤坂ドリブンズ)
そんな各チームの思いが表れたような、重厚なメンツでの一戦となった。
東1局
この弩級の手をもらっても、いやもらったからこそ、1巡目に出ただけでなく、たった今打たれた役牌のさえ見送った滝沢。チートイツのイーシャンテンになったこともあり、鳴き急いで警戒を呼んでしまうのを避けつつ手を作っていく。
そして、思惑通りに、続いてを仕掛けることに成功。見事をツモって6000オールの滑り出しとなった。
東2局
下家松ヶ瀬の迫力あるソウズのホンイツに対して、と被せていった近藤。ペン待ちのダマテンから、待望のを引き入れてファイナルアンサー。リーチと打って出た。
これを一発でツモりあげる。裏は乗らなかったがリーチ一発ツモ赤、2000-4000のアガリに。
東3局
松ヶ瀬は少しの間の後に、とのシャンポン待ちではなく待ちでリーチを打った。これは、上家近藤が5巡目にを切っているのに今を手出ししたことから「はトイツ落としである可能性が高い」と読んだのではないだろうか。
以前1/7の試合でも、
近藤の手出しからの所在を読み切って、
単騎のチートイツを近藤から直撃したことがある松ヶ瀬。
この日の勝利者インタビューで、松ヶ瀬は狙い撃ちの思考を語っていた。
だが、それを横で聞いていた近藤。同じ手を二度も喰うはずがない。
近藤は、松ヶ瀬のリーチ時の間合いからも、が狙われている可能性が高いと感じていたのではないだろうか。通っていないを先に。は最後の勝負牌に。
結局は思うようなツモが来ずにオリることとなった近藤だが、勝負師としての気概を垣間見た1局だった。
この局は松ヶ瀬の一人テンパイで流局となった。
東3局1本場
たろうはここから打とする。
が2枚切れなので、3枚組にならないを先に手放して、カン待ちへの布石を作るのが狙いだ。
また、→とリャンメンを外すとあまりにも派手な切り出しになり、あからさまにホンイツが匂ってしまう。そのあとにを切るとシャンポン待ちなどの可能性も上がって待ちが苦しくなることから、先にを切ってリャンメンターツ続け切りルートを避けた格好だろう。
このように「牌の前後をぼかす」河の作り方がたろうは非常に上手い。あとからが手から出てきてもそれはそれで「?」となるのだが、やはりが先に打たれている分、
こうなったときが強い。をポンして、がアンコとなって切り。
狙い通りの待ちを松ヶ瀬からとらえる。ホンイツ5200の出アガリとなった。
東4局
親番のたろうは、テンパイまで持っておいたを河に放ってリーチ。もちろん重なりを見ていたのだが、こうしてリーチ宣言牌までを引っ張ると待ちが本線級の扱いとなって、他家にとって押しづらい牌が増えることにもなる。
悠々とを引きアガり、裏も乗せて4000オール。一気に滝沢を逆転することに成功。
東4局1本場
ここもたろうが魅せる。バラバラの手を臆することなく目一杯に構えたのも素晴らしいが、ダブを重ねたときに切ったこのが非常に優秀だ。
両脇は早々にを切っていて、対面の近藤の3巡目も打。場況からに的を絞った一打だ。
から鳴き始めてもポンし、
狙い通りにでの出アガリ。滝沢からのダブ2900は3200のアガリとなった。
東4局2本場
ゼウスの選択が炸裂する。
たろうはここから打! 明らかにソウズの場況がいいのでソウズの2ブロックは確保。ドラ表示牌と合わせてが4枚見えていることから、というマンズ部分の、二度受けを始めとする伸びを高く評価した格好だろう。
このツモを見て、声を上げた方も多いのではないだろうか。狙いすましたかのような引き。そして素晴らしい手格好への変化。
この局は滝沢のアガリとなったが、“河の神”の場況読みに震撼した一局であった。
南1局
南1局は親番の滝沢が計6枚見えの待ちでリーチ敢行。が4枚見えているのにもかかわらず2枚しか切れていなかったを、狙い通りにとらえて1300オール。たろうと滝沢が抜きつ抜かれつの展開に。
南1局1本場
たろうが自風のとドラの待ちでシャンポンテンパイし、ヤミテンを選択。他家からのでの出アガリを狙う。
すぐに近藤もテンパイ。ツモでのアガリと、最終形である引きを視野に入れ、こちらもダマテンに構える。
「ツモ」
ツモったのはたろうだった。ツモ赤ドラドラ。2100-4100のツモアガリで滝沢を突き放す。
南2局は、
を2鳴きした松ヶ瀬がドラ1をツモアガリ。
続く南3局の親番で、
松ヶ瀬は4巡目に即リーチを打つ。のちに語っていたが、下家のたろうが速度感のある河をしていたことがリーチに踏み切った理由の一つだそうだ。
そしてこれをたろうからとらえ、裏も乗って7700のアガリに。勝負の行方が一気に分からなくなってきた。
さらに松ヶ瀬が畳みかけるも、南3局1本場は松ヶ瀬の一人テンパイで流局。
南3局2本場、
一瞬、手牌に目を落とした滝沢は、
口を開くことなく再び前を見た。
見送ったのは対面の。確かに手牌には、攻めてくるであろう親の安全牌がない。をスルーすれば2枚守備駒が手に残る。
あとで滝沢が悔やんでいたこの選択。
アガればトップ目でオーラスを迎えられる局面。仕掛けて役が確定するイーシャンテンになるのなら、ポンをして前に出る方がいいと私も感じる。
この局も松ヶ瀬がリーチをして、一人テンパイで流局。
次局南3局3本場に、貯まった供託を持っていったのは、
たろうだった。タンヤオ赤、2000は2900とリーチ棒2本を得る大きなアガリ。
南4局
下家の松ヶ瀬が7巡目にリーチ。近藤が切ったに松ヶ瀬のロンの声がかかる。
リーチ七対子赤赤、8000のアガリで試合終了。
東場に「らしさ」を見せつけた、たろうが見事トップとなった。
先日の、
放銃していたはずのを止めて、からを切ってリーチ。
を一発でアガリ切った場面も記憶に新しいが、
今季は特に選択が冴えわたっているたろう。爆発力もあり、これからの追い上げを熱望するドリブンズサポーターにとって非常に心強い存在だ。
「追い上げ」と表現したが、もう上位陣がすぐそこに見えるところまでやってきた。
初年度王者赤坂ドリブンズが冬のMリーグを熱くする。
京大法学部卒の元塾講師。オンライン麻雀「天鳳」では全国ランキング1位。「雀魂」では4人打ち最高位の魂天に到達。最近は、YouTubeでの麻雀講義や実況プレイ、戦術note執筆、そして牌譜添削指導に力を入れている、麻雀界では知る人ぞ知る異才。「実戦でよく出る!読むだけで勝てる麻雀講義」の著者であり、元Mリーガー朝倉康心プロの実兄。x:@getawonarashite