しゅもの大三元が
プロの牙城を穿つ
IKUSA準決勝は
混迷の中にて
文・東川亮 2023年5月30日
EX風林火山「IKUSA」準決勝2日目。
初日を終えての順位とポイント状況を見ると、大勝した者も大敗した者もおらず、まだ大きな差はついていない。4日間8戦で結果が出るだけに、よい状況で後半戦へと向かいたいのは誰しも同じ。そんな各者の思惑が渦巻くなかで生まれた混沌は、試合を追うごとに勢いを増していった。
■2日目第1試合
「奇人・一井慎也、メガネみたいな何かで見通したチートイツ」
第1試合は初日を首位で終えた志岐と、下位に沈んでいる浅井、一井が対戦。特に下位の2人としては早めに巻き返したいところであり、この日は気合いの乗りも一味違うだろう。
・・・?
もう一回、冷静になって見てみよう。
・・・?????
このご時世、人を見た目だけで判断するのはあまりよいことではないのだろう。だとしても、さすがに一井の服装はファンキーが過ぎる。イチゴ柄のパーカーはイチゴの主張が激しすぎるし、耳から下げたピンク色の何かもアレだし、メガネらしきものはレンズがついていない。何だこれは。
だが、この男は日本プロ麻雀連盟のA1リーグを主戦場とする、団体ではトップクラスの打ち手である。その鋭さを見せたのが東2局1本場。メンツ手とトイツ手の両方が見える形だったが、2枚目の中をスルーすると、を引いたところでメンツを壊す切り。手役をチートイツに絞りこんだ。
このは、自身の目からソーズの上目がたくさん見えていて、狙いの牌として残したもの。を引いての待ちテンパイとなり、リーチで打点をつけにいく。
これをテンパイの浅井から捉えて6400。まずは一つ、中打点のアガリを決める。
一井は東4局にもチートイツのリーチをかけ、しゅもから一発で打ち取って再び6400。
その後、オーラスで親番の浅井の追撃を受けるも最後は自らのアガリで決着。準決勝初トップを獲得した。
一井いわく「場に飲まれず、等身大の自分で打つ」ようにした結果がこれらしい。首から下げた藁人形は「悪いことがあったときに身代わりになってくれる頼もしい相棒」。
それはともかく、このような重圧の懸かる舞台でこそ、いつもの自分らしく打つことが大切なのかもしれない。
第1試合結果
1位:一井慎也 +60.9
2位:浅井堂岐 +10.3
3位:志岐祐大 ▲14.4
4位:しゅも ▲56.8
■2日目第2試合
「噛んで集中、一発ツモ! 佐藤孝行のBOOSTBITES」
本大会では、明治の「BOOSTBITES」が冠スポンサーとなっており、第2試合の前には生宣伝が行われた。
「噛んで集中、一発ツモ!」
一発ツモができるかはともかく、実際に噛み応えは抜群なので、ぜひ麻雀を打つ際にはお試しいただきたい。
話を対局に戻すと、この試合は逢川、早川、佐藤がそれぞれに高打点を決めるなかで、一瀬が一人置いて行かれてしまう展開になっていた。
南3局2本場、そんな一瀬に超勝負手のテンパイが入る。ホンイツでダマテンでも満貫から、高目の中をツモれば三暗刻もついて倍満で、トップは無理でも2着は十分に狙えるところまで点数を回復できる。
そこにをポンしていてドラ3になっていた佐藤が追いつく。待ちは直前に一瀬が切った、とはいえピンズの一色手模様の一瀬にを切っている段階で、警戒はされるかもしれない。
麻雀では、こんなことも起こる。一度切ったを再び一瀬がつかむとは。前巡に声がかからなかったに、今度は「ロン」の声がかかった。
ドラ3、8000は8600。供託リーチ棒3本も回収し、佐藤が2着目に浮上、逢川追撃の態勢を整える。
オーラス、逃げ切りたい逢川はの暗刻を頼りに早々と2つ仕掛けるが、そこから手が進まない。
そうこうしている間に、佐藤が目に見えて4枚目のを引いてドラメンツが完成、のシャンポン待ちでリーチをかけた。は早川がギリギリまで絞っていた牌であり、先に出ていたら展開は大きく変わっていたかもしれない。