あの時、助けて
いただいたです
文・越野智紀【火曜担当ライター】2024年2月20日
第2試合
東家:渡辺太(赤坂ドリブンズ)
南家:鈴木大介(BEAST Japanext)
西家:黒沢咲(TEAM RAIDEN / 雷電)
北家:松本吉弘(渋谷ABEMAS)
例年、2月になるとセミファイナル進出争いが熱くなってきます。
第1試合終了後のポイント状況がこちら。
7位の敗退ラインから大きく離れている上位5チームはひとまず安心な時期となりましたが、最後の一枠を賭けた下位4チームはまさに団子状態。
雷電・フェニックス・風林火山・BEASTは残りおよそ20試合で自チームのマイナスを減らして行くことが生き残りの大前提になりますが、現実的に残り一枠しか空いていないことを考えればポイントが近いライバルチームに大きく勝たれることも許されません。
また今シーズンから9チームになった影響からなのか試合の組み合わせが時期によって偏る現象が発生していて、この日に試合を行っていた現在最下位のBEAST Japanextは2月にある16試合中14試合でTEAM雷電との直接対決が組まれていました。
ここまでの両チームの2月の成績はTEAM雷電が+7.7ポイントで、BEAST Japanextは▲140.8ポイント。
試合数は徐々に減っていき、差も思うように詰められず。
足元に火がつき始めた獣の危機を救うべく第2試合に臨んだ大介選手の使命は、まずトップを取ること。これが最優先事項。
さらに黒沢選手にラスを押し付けることが出来れば追加ボーナスの獲得になります。
さっそく大介選手らしい切りが出ます。
教科書の1ページ目には切りと書いてありましたが、これが大介選手の感性。
一打目に字牌は切らないものと仮定して、数牌の不要牌が明確に選択出来る時は『状態良し』と自身の調子を計っているのです。
こういう考え方があることは昔から知ってはいたのですが、難解なので理解は出来ていませんでした。
ただ別の流派に伝わる一巡目に2から8の数牌が切られている相手には字牌の危険度が上がるといった思考は、この大介選手には効かなそうです。
また一打目に数牌から切って手牌が良い時と悪い時、たまに一打目から字牌を切って手牌が良い時と悪い時、これらのバランスを上手く取れれば周りの研究が足りていない分野なので麻雀が面白くなりそうです。
迷わずが切れて気持ちよくスタートした大介選手でしたが
最大の敵である黒沢選手からのリーチを受けると、現物のをトイツ落として一旦迂回します。
終盤に手牌がまとまり戦えるイーシャンテンになり、ここで選択の時間です。
まず最初に浮かぶのは現物のを切り、にくっついたらを勝負する形。
巡目が深く自分のアガリが簡単ではないと判断すれば、これが手堅い選択なように見えましたが
大介選手は先にを勝負しました。
他家が受け気味ということもあり山にが残っていそうでドラの引きも充分に期待でき、を引いた時に余るもかなり安全な牌です。
また一打目にを切ってる黒沢選手にが愚形であたるケースは少なく、多く残っていた無筋の中でもは安全よりの牌。
さらに南家ということで最大でリーチ一発ツモピンフハイテイドラドラ赤の倍満まで見ていた大介選手にとって、この切りは至極当然の選択と言えました。
全員の手を開いて見ると思惑通りには山に2枚残っていましたが、ついでに見えてしまった下家の待ちテンパイ。
黒沢選手にが捕まり満貫の放銃となりました。
狙いと真逆の展開にダメージを受けるも「10%以下の放銃率の牌で降りてハネマン級の手を逃すほうが罪は重い」と気持ちを切り替え、点数的な失点以外のダメージは一切捨てて次局へと進んでいました。
その次局、試合後に黒沢選手自身で振り返った局がこちら。
にくっついたらマンズを落とせると、ここから切りを選択。
を切っていたこともあり「自分らしく打つならをバシッといくべきだった」と悔いた局でしたが
この僅かなズレで選ばれたが太選手のカンチャンへと吸い込まれてしまいました。
自分らしくで放銃した大介選手と、悔いの残るで放銃した黒沢選手。
麻雀に神がいるのなら、どちらの牌に魂が宿るのか