風見くくが神域リーグに足を踏み入れたのは一年前。
渋川難波監督に指名を受け、チームグラディウスの一員として1年を戦うことになった。
“成長”をチームスローガンに掲げた初年度グラディウスの中で、風見はしっかりと期待に応え、教えを吸収し、成長していった。
しかし、その成長が、即結果に繋がるとは限らないのが、麻雀で。
風見は初挑戦となった昨年の神域リーグで……ただの一度も、トップを獲得することはできなかった。
トップはおろか、2着でさえも、チームに持ち帰ることができなかった。
昨年のグラディウスはそもそもチームとして苦しかったが、レギュラーシーズン終盤には朝陽が、そしてセミファイナルでは天開が、それぞれ大きな活躍を見せて、見事ファイナルまで勝ち残った。
だからこそ、昨年のシーズン終了時、渋川監督は「くくにトップを獲らせてあげたかった」と口にした。
はっきり言ってしまえば、昨年風見を襲った不運は、はっきりと下ブレであると言えるものだった。
教えてもらったリーチは、満足に実らず。懸命に腕を振り続けても尚、麻雀の神様が微笑むことは無かった。
もちろん、風見の選択が完璧であるわけではない。だとしても、享受できておかしくないくらいの平凡な運さえも、風見は受け取ることができなかったように思う。
そのまま、初年度のシーズンを終えて。
ひょっとすると風見が、麻雀を嫌いになってしまうのではないかとすら心配した人も、少なくはなかっただろう。
それでも、風見は再びこの舞台に帰って来た。
チームアトラスとしての初戦は、アガリを何度も重ねるも、惜しくも3位。
自身初となる、神域リーグでのトップに向けて。
風見が今日も、強敵達に挑む。
第2節第1試合
東家 ゴモリー (チームアキレス)
南家 ルイス・キャミ―(チームグラディウス)
西家 風見くく (チームアトラス)
北家 鈴木たろう (チームゼウス)
東1局
南家に座るルイスが、ここからドラの切り。
手牌を構成する要素は、もうこれで事足りた。ドラを悪戯に引っ張るよりも、先に放すことで後の安全を買う。
しっかりと手を育て、待ちのリャンメンリーチに辿り着いた。
ルイスは神域リーグ3年目。アトラス、ゼウス、と2つのチームを経験して、今年はグラディウスのメンバーとなった。
チームが変わり、指導者もその分変わりながら、ルイスの麻雀もまた、成長を続けている。
終盤にルイスがツモアガリ。
裏を1枚乗せての2000、4000での先制パンチとなった。
東2局
風見がこの形から選択。
素直にリャンメン2つに取るのであれば、切りだが。
ここで風見が選んだのは切り。
赤を使っての高打点を見ながら、が3枚見えていてカンの景色も決して悪くはない。
この選択が功を奏する。
見事カンを引き入れて、待ちのリーチへ。
ドラをツモれば12000の高打点だ。
風見のリーチ直後、北家に座るゴモリーにテンパイが入った。
タンヤオドラ1の手。ここは風見に通りそうなを切ってのカン待ちのダマテンに構えた。
こうしておけば現物のはアガれる他、引きでの三色変化もある。
そしてなんとこの風見から見て確実に最後の1枚であるが、よりにもよってリーチ者風見の手元に来てしまった。
これがゴモリーの神域初アガリとなる。2600のアガリ。
ダマテンのカンを選択したゴモリーを褒めるしかないが、風見としては不運な放銃となってしまった。
東3局
前局のアガリを皮切りに、ゴモリーが畳みかける。
ここは暗刻の好材料から、を引き入れてテンパイ。
一旦単騎に構えるかと思われたが。