松ヶ瀬隆弥、逆襲の超巨砲 その火種は繊細なバランスと共に【Mリーグ2024-25観戦記 9/24】担当記者 #東川亮

松ヶ瀬隆弥、逆襲の超巨砲 

その火種は繊細なバランスと共に

文・東川亮【火曜担当ライター】2024年9月24日

Mリーグ2024-25シーズンの開幕式で、EX風林火山を代表してあいさつした松ヶ瀬隆弥は、会場に集まったファンや関係者、そして中継を見ていた全ての人の前で宣言した。

「今年当たる選手たちは二度と麻雀牌を持てないくらいめちゃくちゃにしてやりたい」

 

もちろんそれは「麻雀で」なのだが、体が大きく外見も強面である松ヶ瀬の言葉だけに、そうではないと分かりつつもドキッとした人は多いだろう。

当然、ファンのそうした反応を狙っての発言である。そして自身にとっても、自らに注目を集めてプレッシャーをかけ、自分を鼓舞する意味合いもあったはずだ。

 

大和証券Mリーグ2024-25。

松ヶ瀬隆弥、逆襲のシーズン。

「繊細なる超巨砲」は、このまま負けて終わるような男じゃないだろう。

第1試合

東家:内川幸太郎(KADOKAWAサクラナイツ)

南家:瑞原明奈(U-NEXT Pirates)

西家:松ヶ瀬隆弥 (EX風林火山)

北家:猿川真寿(BEAST X)

東2局、松ヶ瀬の手番。

【4ピン】が入って1シャンテンとなり、

松ヶ瀬は【7ソウ】【8ソウ】払いを選択した。

東を切ってピンフ狙い、【6ソウ】引きによる絶好の3メンチャンテンパイも見たくなりそうだが、ソーズは2度受けとなっており、【9ソウ】は既に3枚切れ。単純な見た目枚数では【9ソウ】より【2ソウ】【東】のシャンポン受けのほうが多くなっている。また、【東】は局の中盤にもかかわらず1枚も見えていないことから、鳴かれないようにする意味合いもあっただろう。もし山に残っている、あるいは誰かが切ってくるなら、それを使って自分がテンパイを取ればいい。

【東】は親の瑞原にトイツだった。切ればおそらく鳴かれ、松ヶ瀬としても後の進行が難しくなっていた。

直後、最後の【2ソウ】を引いてテンパイし、【3ソウ】【6ソウ】待ちリーチ。相手に楽をさせずに自分が先手を取る、繊細な手順だ。

ただ、うまく打ったからといって、それがそのまま結果に結びつくとは限らないのが麻雀。後から追いついた猿川のカン【5ソウ】待ちをつかんでしまい、3900の放銃となってしまう。

東4局の選択も面白かった。

内川のリーチを受けながら、ネックのカン【6マン】をチー。

テンパイだが、受け方が問題だ。

松ヶ瀬はここからリーチの現物になっている【3ソウ】【6ソウ】のリャンメン待ちではなく、ドラの【4ソウ】単騎待ちに受けた。

これも攻防一体の選択である。

まず、現状はすでにリーチで攻め込まれている状況である。対抗する際に、打点がタンヤオドラの2000点では心許ないが、タンヤオ三暗刻ドラドラの8000点であれば、押し返すに見合う価値がある。

そして、リャンメン待ちにするには【4マン】【3ピン】【7ピン】のどれかを切らなければいけないのだが、全て通っておらず、かなり危険な牌。【5ソウ】も通っているわけではないが、それであれば価値の高いテンパイに受けたほうがいい、という判断。

そして、単騎に受けた理由がもうひとつ。

終盤、松ヶ瀬は【6ピン】を引いて、

ドラの【4ソウ】切り、フリテンの3メンチャンへと受け変えた。これは【5ソウ】が4枚見えていて【4ソウ】【7ソウ】待ちを否定、【2ソウ】も3枚見えで【1ソウ】【4ソウ】待ちがワンチャンスになるなど、【4ソウ】がドラとはいえ切りやすい状況になっていたのが大きい。松ヶ瀬は単騎に受けた当初から「【4ソウ】が一番通りやすそう」と思っていたそうだが、それを補強する材料も生まれていた。

結果は流局、松ヶ瀬はテンパイを取りきった。東場こそアガリに恵まれなかったが、持ち点は2万点近くをキープして反撃の機会をうかがう。

そのチャンスが南1局に到来。役牌2つがトイツでピンズ多め、一気にホンイツへと迎えそうな牌姿だ。

その後、松ヶ瀬はもうひとつ仕掛け、最終形は【西】【發】シャンポン待ち、どちらでアガっても満貫という大物手になった。

余談だが、こういうときはフーロ牌表示が大変ありがたい。

これを親番の内川から捉えて8000は8600。

供託を合わせて1万点近い収入になり、一気に2番手へと浮上する。

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