「このツモがいいね」と
牌が言ったから
11月4日は永井記念日
文・カイエ【火曜担当ライター】2025年11月4日
長く麻雀をやっていると、時に牌が語りかけてくる錯覚に陥ることがある。
まあ単に徹夜で脳がバグっているだけなのだが。
例えば全自動卓の中では、牌同士がこそこそと話し合い、打ち手や状況に合わせた牌を意図して送り込んでくれているのではないかという妄想。
「あの北家にはこのツモがいいね」
「ではイーピンくん、すぐに出動したまえ」
擬人化された牌が、上長の指示を受け、えっほえっほと牌山まで走り、ちょこんと其処に寝そべる。かの悪名高き牌操作も、人智を超えた天運も、すべてはそうしたシステムのもとに成り立っている。王牌のワンさんが最強なのも牌たちの仕業だ。あれは麻雀牌のかくれんぼ。裏ドラめくられ、見ーつけた。
いま、麻雀界におけるホットなテーマのひとつに、運と実力の比率は【運が98%】というものがある。身も蓋もない話だが、筆者も麻雀を全く知らない相手から「麻雀って、要するに運ゲーなんだよね?」と聞かれた際に「初心者同士の対戦は運、中級者同士になると実力の影響度合いが増し、上級者同士の対戦になると、また運の要素が大きくなる」と答えたことがある。
対局を観戦していると、推しチームや推しメン以外の勝利(和了)は「運」と片付けられる傾向が高い。おそらく、自分にとって都合の悪いシーンや展開が、印象深く脳裏に刻まれているためだろう。
運が良いということが、恰も悪いことのように語られがちな風潮もよく分からない。運も実力のうちというように、Mリーガーたるもの、運が良いことなど当たり前の必須条件のように思う。実際、Mリーガーに選ばれている時点で強運の持ち主だろう。そしてもちろん、運が悪いときに実力で下振れを最小限にとどめることができる者こそが、プロなのだ。あるいは、上振れ期にしっかりと貯えられる者が。
本局においても、応援するチームや選手の「運」に一喜一憂する場面が多々出現する。麻雀なのだから、それは当然だ。この半荘だけが、例外なのではない。
だが、随所に光るプロの技や読みは、運を引き寄せ/活かすための手続きであり、あるいは抵抗であるということは、ぜひ知っておいてもらいたい。
麻雀とは、牌たちの遊戯などではなく、あくまで人間同士の高度な知的ゲームなのだ。
第2試合
東家:萩原聖人(TEAM RAIDEN / 雷電)
南家:竹内元太(セガサミーフェニックス)
西家:渋川難波(KADOKAWAサクラナイツ)
北家:永井孝典(EX風林火山)
東1局
先制リーチは渋川。
お手本通りのタンピン手順で運び、待ちの
–
は山に6枚!
そこに親の萩原が追いついて、カン
でのリーチは山に2枚。
これを枚数有利だった渋川が掴んでしまい、
リーチ・タンヤオ・赤で7700点の放銃。
東1局1本場
先ほどのリベンジとばかりに、渋川が再び
–
で先制リーチ。
今度は山に3枚と、前局の半分の枚数だが、
親でイーシャンテンの萩原から
が出て、リーチ・ドラ1の2600点。
三分の一の「貸し」を取り返す。
東2局
4者の手が、激しくぶつかる。
テンパイ一番乗りは永井。
カン
はダマテン。マンズのリャンメン変化でリーチを狙う。
親の元太も追いつく。リーチ・ドラ1で先制のリーチ。
萩原も名乗りを上げる。ドラを重ねてカン
で追っかけリーチ。
なかなか良形変化が訪れない永井も、テンパイをキープしている。ここも、追っかけリーチの萩原に対し、一発で無筋
をノータイムプッシュ!
ただし、
ツモで
切りは萩原に当たり。
ツモで
切りは元太に当たりと、リャンメン変化で出ていく牌がすでに掴まっている状況。肝心の
は山に無し。
囲まれた渋川は苦しい。永井の2軒リーチへの押しからも3者を警戒せねばならない。もとより共通安牌は無い。ということで端の
を渋々、勝負。
そして遂に
が埋まりテンパイ。ラス目でひとりノーテンも厳しく、
を切って魂の追いつき。リーチ判断に関しては、たった今、対面の萩原から切られた
が永井からオリ打ちされる可能性を見てダマテンの選択に。
なるほど、永井前巡の少考後
手出しがオリた可能性もあり、ならば安牌の
が合わせられることもある。ここは息を潜めて獲物を狙う。














