熱論!Mリーグ【Mon】
高宮まり、魚谷侑未は
“亜樹・黒沢”世代を
超えられるのか
文・花崎圭司【月曜担当ライター】2018年10月22日
Mリーグ第4週月曜、第13節。
Mリーグで見たかった戦いが第1回戦で行われた。
その見たかったカードというのは「女流Mリーガー」バトルだ。
Mリーガー21人中女性は5人。そのうち魚谷侑未プロと茅森早香プロは同じチームなので、この4チーム同士の組み合わせしかオール女流対決は実現しない。
その第1回戦の出場選手は
東家・黒沢咲(TEAM雷電)、南家・二階堂亜樹(EX風林火山)、
西家・魚谷侑未(セガサミーフェニックス)、北家・高宮まり(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
の4人だ。
男ばかりだった麻雀の世界に彼女が出てきたことは“革命”だった。それまでも女流プロはいたが、彼女の存在は「女流麻雀プロのアイコン」となり、現在まで引っ張ってきている。彼女をモデルとした漫画「aki」の原作を書かせていただいたが、本当にいろんな偶然が重なって女流プロ「二階堂亜樹」という存在が生まれ、麻雀界を変えたことが分かる。漫画はまだまだ続きを考えていたところだったので関係各社、よろしくお願いします。
と、閑話休題。亜樹というアイコンに姉・瑠美が加わり、「二階堂姉妹」というさらなる大きなアイコンができた。しかし麻雀は2人ではできない。
ライバルが必要だ。そこに現れたのが黒沢咲だ。
その後数多くの女流プロが続いて出てきたのは、麻雀ファンの方ならご存じだろう。
しかし、あるときマンネリではないが停滞したムードがあった。男性は男性、女性は女性のやり方みたいな区分、同じようなメンツのカード、麻雀の考え方・戦法。それがパターン化されてきた。
それを突き破ったのが魚谷侑未プロだ。
当時は「鳴き」というのは邪道という考えが強かった。例えば、鳴き三色のみでアガるというのは、ルール上はできるが、それをやると明らかに空気が悪くなった。
手役で魅せるのが麻雀プロだ。それがエンターテイメントだ。
しかしそこから「勝つために一番効率がいい、確率がいい打牌はなんなのか」、「使えるものはすべて使って戦う」という時代に入った。馬場・猪木のプロレスから、前田・髙田の総合格闘技にうつったのに似ている。
話はそれるが、総合格闘技におされていたプロレスが、オカダカズチカというひとりの天才によって、新しいエンターテイメントプロレスが人気となっている。麻雀もMリーグという存在によって、新しい原点回帰、麻雀古典復興(ルネサンス)が起こるのかもしれない。起こってほしい。
その象徴となる「モナ・リザ」はいったい誰なのか?
その候補のひとりが、高宮まりプロだ。
女流の宿命でもあるが、どうしてもビジュアル先行になってしまう。高宮もいろいろと言われたであろう。
今から5年ほど前、魚谷侑未プロを取材し、彼女の自伝的コラムを書いていた。その時一度、高宮プロに取材したことがある。まさにビジュアルで注目されはじめたころだ。
その日は雨で少し寒かったことを覚えている。待ち合わせ場所にいると高宮プロがやってきた。髪はボサボサで化粧も最低限、服装もラフなものだった。疲れが見えていた。これがデートなら僕はビビってしまって解散、というところだが、仕事なので自分の強度の人見知りを心の奥の棚にしまって、インタビューをした。
何人か女流プロ雀士の方にインタビューをしたことがあるが、全員自分を持ち、ルールがあり、そして真摯に話してくれた。仕事で麻雀界以外の人にもインタビューをしたことがあるが、麻雀プロで適当な感じで話をする人はほとんどいなかった。
高宮プロも親友である魚谷プロのこと、麻雀のことを話してくれた。
そして彼女はなにより勝つことを欲していた。勝ち方も華麗な麻雀ではなく、力強い麻雀で進みたい、という印象を持った。
このMリーグ女流プロの戦いは、ただのチーム対抗戦ではない。「亜樹・黒沢」世代と「魚谷・高宮」世代の戦いでもある。
高宮は東1局、2局と軽快にアガり、点数を稼いでいくが、東3局、黒沢がハネ満をツモり、頭ひとつ抜ける。
そして南1局3本場。流局が重なりリーチ棒が4本たまる。現代麻雀ではこの供託を積極的に取るように手牌を進めるのが主流になっている。黒沢の手元に青い千点棒が4本並ぶ。
7巡目。亜樹がダブをポンしてを切る。
魚谷はそれに呼応するかのようにをチーし、食いタンに向かう。
【亜樹手牌】
打 ポン【魚谷手牌】
打 チーその後、魚谷がポンをしてテンパイ、亜樹もテンパイを入れる。
【亜樹手牌】
ポン ポン【魚谷手牌】
ポン チーそして高宮もテンパイを入れ即リーチする。
【高宮手牌】
亜樹と魚谷からテンパイ気配を感じているはずだが、迷いなく“ノータイムリーチ”をする。結果亜樹へ放銃となるが、これが高宮の力強さだ。
南2局。高宮は順調に手牌を進め、9巡目テンパイを入れる。
【高宮手牌】