内川幸太郎、苦渋の決断…ドリブンズのトップ阻止へ決死の四暗刻単騎ダイブ!【熱論!Mリーグ】担当記者:渡邉浩史郎

しかし16巡目。内川もやっとテンパイ。待ち。これでツモもしくは黒沢からの直撃で三着になれる。を打ち出す内川の手は震えていた。

その直後、勝又からが放たれる。内川のアガリ牌だが……

内川はこれをスルーした。

これをアガると13.6ポイントの加点になる一方、抑え込みたいドリブンズ・村上が勝又を捲りトップになってしまうことで、逆に自チームの首を絞める展開になりかねない。このデメリットと自身の着アップの可能性を重く見て、ロンせずを選択したのだ。

この決断が、一体どれほどの悩みを孕んだものだったであろう。

ロンするか、しないか。この2択を単なる麻雀における技術の話に留めることは、もはやできないかもしれない。

自身の選択が報われることを祈るようにハイテイに手を伸ばす内川。

しかしそこにいたのは

だった。

思わずのけぞる内川。

ここで考えるべきは

①黒沢選手の手役は何なのか

②黒沢選手の待ちはどんな可能性があるのか

③このを通すとどんなメリットがあるのか

④こので放銃した場合にどうなるのか

の四つだろう。

①黒沢選手の手役は何なのか

あまり押す理由のない黒沢の無筋連打、の暗槓ということを考えると、やはり黒沢は四暗刻濃厚であろう。

問題はツモり四暗刻か、単騎かであるが、これは一概に決めきれない。

「ツモり四暗刻ならリーチをかけているのではないか?」という意見も見られたが、黒沢にはリーチ棒を出したくない点棒状況という理由もあるし、風林火山から見逃してドリブンズからアガるためにダマにするという理由もある。これだけでは判別がつかない。

②黒沢選手の待ちはどんな可能性があるのか

ツモり四暗刻と仮定したとき、放銃し得る牌は11種類。四暗刻単騎であればさらに増える。は一枚切れで単騎の時に選ばれやすい等の理由があるとはいえ、一点読みで当たるとは言いきれない牌である。

③このを通すとどんなメリットがあるのか

一番大きいのは次局も跳満ツモ条件が残ることであろう。仮にここでテンパイを崩してしまうと、ほぼ確実にテンパイしているであろう黒沢とテンパイノーテンで点差をつけられてしまう。そうなればほとんどラスが確定した状態で、次局を戦わなければいけなくなってしまう。

④こので放銃した場合にどうなるのか

仮に勝又に放銃であれば、素点こそ失うものの風林火山トップ、ドリブンズ二着の構図をより狙いやすくなるので、決して悪くはない。

黒沢に放銃ではどうだろうか。

ツモり四暗刻であれば出アガリでは最大跳満であり、素点こそ失うものの風林火山のトップを確定させる振り込みになる。

四暗刻単騎の場合、単純に素点で32ptを失うこととなる。一方でドリブンズは二着→三着で、順位点20ptを失う。ドリブンズとの関係だけで見れば、跳満放銃とあまり変わらないのだ。

内川は、そもそも放銃するかわからない、放銃しても対ドリブンズとして見れば最悪の結果とは言えないの二点を軸に……

を打った。

雷電からすれば値千金の逆転トップ。打った内川は箱下32500まで落ちる、痛みを伴う放銃。

役満が見えている・容易に予想されうる状況で、次局跳満での着アップ条件を残すために役満に放銃したという事実だけを見れば、やり過ぎと思われるだろう。

実際に内川も放銃したときは、覚悟を決めた表情をしながらも……

その手牌が四暗刻単騎であれば大きく崩れ落ちた。

しかし何度も言うが、これはドリブンズとの条件戦という観点から見れば決して損ではないのだ。

実際、役満放銃の今回のケースでドリブンズと詰まった点差は93.2pt。12000をアガっていれば107.0pt、そもそもテンパイアシストをしなければ123.8ptも詰め寄られていた。

もちろんこの選択が、ひいては南4局の風林火山へのアシストが正しいのかどうかはまだわからない。ボーダーを遠ざけたとはいえ、優勝という観点から見れば点数を減らしているのは間違いないし、そもそもボーダーをそこまで強く意識するべき状況だったのか、セミファイナルからファイナルへの進出確率をいたずらに減らしたという見方もできるだろう。

長いリーグ戦最終盤での条件戦における答えは、実際に結果を見て見ないと分からない。

遠くはファイナル最終日、近くはレギュラーシーズン最終日に答えが分かる。

その時に桜の騎士たちの笑顔が見えるかどうか。桜の開花を待つかのように、見守ることにしよう。

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