以降、谷井から鳴ける牌は一切零れなかった。
徹底した絞りは中盤で感じており、
テンパイが入らないまま巡目が進むにつれて敗北を覚悟したことを覚えている。
「ラス前、もう少し稼いでおくべきだったか…いや、
チーだったか…」
この絶対やってはいけない
「勝負中の反省」が、ひとつの逸機を招く。
15巡目
この形に構えた直後、対家の阿賀から雀頭の
が出る。
「テンパイしてくれ!」の思いのあまり全く考えておらず、
スルーしてしまった。
対面からポンのためツモ番は減るが、ポンして
を切ればテンパイチャンスが4種から7種に増える。
が3枚見え、かつ上家の谷井が徹底的に絞っているこの状況。
ポンだったのではないか。
願いや気合いでツモ牌は変わらない。
そんな暇があったら全ての可能性に備えろっていう話だ。
ちなみにこの
、もし下家から出ていたらはっきりポン優位。
ツモ番が減らないためだ。
情けない話だがそれすらポンできていたか怪しい。
それほどにこの時は追い込まれ、焦り、無駄に願っていた。
実戦は最終手番
セーフ!世界の皆さん、新井がギリギリテンパイしました!
…日吉辰哉、実に愉快な実況である。
南4局 1本場 ドラ![]()
1本場により近藤がマンガンツモ条件に。
この局、そしてこの半荘の明暗を分けたのが9巡目
ここから生牌の
を残し、
切り。
理由は非常に難しく、際どい。
・ドラ表示牌であるカン
が、価値が低いうえにあまり引かなそう
(対面の阿賀がマンズ一色模様かつ、下家の近藤がドラ周辺を使っていると見ていた)
・
が谷井にポンされやすい牌
・
が山にごっそり残っている可能性もそれなりにある
と理屈をつけることはできるのだが、実際のところ九割方直感である。
この時、谷井の手牌は
なんと
ポンテンのイーシャンテン!
いくらなんでも出来すぎな気もするが、勝つときはこんなものかもしれない。
そして11巡目
運命の
は私の元へ。
劇画かよ、っていうくらいの展開だ。
絶対落とせない親番。
役満賞の10万円は魅力的だがさすがに
を切り、チートイツへ。
谷井からリーチを受けるも待ち選択に成功し、
趨勢を決する9600は9900を谷井から直撃。
互いにアガリ牌は山に1枚であり、
谷井の待ちである
は私が掴んだら打った可能性が極めて高い。
平場のテンパイといい本局のアガりといい、幸運に恵まれすぎた。
谷井・近藤共にバイツモ条件となった2本場はダメ押しの4000は4200オール。
実はこの局、近藤に国士無双イーシャンテンが入っている。
バイツモ条件程度で安易な配牌オリは禁物。
プロ歴20年、奇跡の逆転は何度も見ている。
3本場は流局で決着。
反省点は多いものの、なんとか決勝進出を決めた。
インタビューでは、しっかりと敗戦の弁を語る谷井の姿が特に印象的だった。















