朝倉の欲しいもう1枚のが石橋のもとへ。こちらはすでに対応しており、もう出ることはない。白鳥にも1枚あるので、となると残るはに頼るしかない。
「じゃあ多井さんこれ、アガるとき大四喜ですよ」(日吉プロ)
解説席に思わず笑いが。大四喜だなんて見たことがない(小四喜よりもさらに難しい)。筆者も一緒になって笑ってしまった。ちなみに麻雀最強戦では大四喜はダブル役満とはならない(複合役の役満のみダブル役満となる)。
朝倉はをツモって打。こうなると捨て牌のがにくい。残していれば小四喜のテンパイが取れていたのだが。
その出たを白鳥がポンして打。役はなくなってしまうが単騎の形テンに取った。最後の最後までは出さない方針だ。そしてついにドラマが訪れる。
「うーわー!テンパイー!」(日吉プロ)
一度逃したがついに朝倉の手が完成した。は白鳥の手に1枚、山に1枚。は白鳥と石橋がそれぞれ1枚ずつ持っている。
盛り上がりが最高潮のところに松本がを引いた。を切ればの待ちになる。
「ちょっと待った」(多井プロ)
「ちょっと待ってリーチしちゃった!」(日吉プロ)
「大丈夫?これ!」(多井プロ)
「あっ!」(日吉プロ)
白鳥に分岐点。を打つと松本のアガりだ。は当然朝倉のアガり。
は一応ワンチャンスだが安全とまではいえない。
「これ打ったら大変だぞ」と多井プロ。オリるならば松本にも通っているだ。
どうにか回避。形テンすらも外して完全に受けに回った。
これで勝負は朝倉VS松本に絞られた。
「あるぞー!!」(絶叫の日吉プロ)
「うーわー!」(日吉プロ)
白鳥もまだ安心できる状況ではない。完全な安全牌がなくなったところで、朝倉に通っていないを切った。
「あるよー!あるよー!」(日吉プロ)
「ああっ!違うっ!」(日吉プロ)
「違うのよ。違いすぎるのよ」(多井プロ)
次巡、松本の番でついに決着がついた。
「いたー!48000!48000いったー!」(日吉プロ)
「いったー!朝倉いったー!松本ー!」(日吉プロ)
「大四喜出ちゃった」(多井プロ)
「ああっこの表情、マスクで半分覆われてほとんどわからないが、これは悲しい!ABEMASの、右腕が、飛んだ! さよなら、さよなら松本吉弘! いきなりの48000点。台本がめちゃくちゃになってしまった!」(日吉プロ)
わずか東1局で勝負が大きく動くこととなった。実質朝倉はほとんど勝ち抜け確定、松本は絶望的に。この結末の背景には白鳥のに対する繊細な応接があった。影の立役者といえるだろうか。
改めて目に焼きつけておきたい。歴史的な役満・大四喜がここに生まれた。大四喜はこれまでMリーグでは現れたことがなく、麻雀最強戦の長い歴史の中でも筆者が調べた限りでは見つからなかった。麻雀最強戦の歴史に朝倉康心の名前が刻まれたことは間違いない。
さて、東1局を終えて勝負が50%決まってしまったといっても過言ではなくなった。このあと松本が怒涛の満貫連発で追いすがるのだが、いかんせん点差が離れすぎていて全体を通してみると……という結果になってしまった。申し訳ないが松本の勇姿をカットして勝負の分かれ目となった東4局に移りたいと思う。
決勝卓には2名までが勝ち上がりとなる。朝倉はほぼ確定として、残る一枠を誰が獲るのか。白鳥と石橋に絞られたと言いたいところだが、松本がじわじわと迫ってきている。
中盤で手がまとまっていたのは松本。カンを埋めたあとにを落としてメンタンピンのルートにした。よく見るとの位置が離れている(の隣から切った)のに気づくだろうか。すぐに落とすと決めていたようだ。
を引いてテンパイ。しかしシャンポン待ちでは不満だ。を引いてドラも引くのが理想だろう。ここはリーチをかけずに進める。
親の石橋はここまであまり目立たずにじっくりと力をためていた。
朝倉はの暗刻を武器にゆったりと構える。石橋に放銃だけは避けたい。