差し込みの方針も頭にあっただろう。しかし自身の手にドラはなく、何が起こるかわからない。ここは当たらなそうな
の対子を落としていく。
粘りのヤスが迫ってきた。じわじわと456の三色が見えてきたではないか。打
としてイーシャンテンに。
井上に
がきた。これで守りがさらに厚くなった。ただ、自分で決めにいくこともできそうになったので、方針が難しくもなっている。
さあ須藤にテンパイが入った。ここは当然の
切り。三色ドラ1で、下石から直撃でも2着だ。下石の場には
が切れているので、出アガりでもいけそう。
と、思うのは甘い。リーチをかけ、満貫を作って勝負。一気に場に緊張が走った。
これによって井上が
を打てなくなったのだ。須藤がリーチをかけていなければ、ここで
を切って下石に放銃でゲームが終わっていたのである。
は須藤に通っていない。井上は現物の
を切った。
九死に一生を得たのは3着の小平も。
を引いて受け入れが広くなった。当然戦うしかない。
を切って手を進める。須藤にも下石にも通っていない。
下石も須藤のリーチによってピンチが訪れていた。須藤に放銃となったらアウトである。引いてきたのは
だ。須藤に
を手出ししたあとがあり、かなり危険に見える。
じっくりと時間を使う下石。考慮は1分を過ぎた。無理もない。この一打で勝負が大きく変わる可能性があるのである。
腹を決めて
を押した。代えて現物の
を切れば安全だが、次の無筋でまた困ることになりそうだった。ナイスファイトである。
井上は
を切って撤退。須藤、もしくは下石に勝負を委ねる。
そこに小平にテンパイが入った。
を切って![]()
待ちのリーチ。井上にとってはがっくりだが、視聴者のボルテージは最高潮だ。全員に可能性のある大勝負となった。
結果は須藤が
を掴んだ。なんと出遅れていた小平がこの局を制す。
裏も乗って12000点の収入となった。小平が復活を遂げて2着に。須藤はほぼ脱落となったが、こればかりは仕方がない。
勝負は終わらない。南4局1本場に移る。
三つ巴の勝負になり、井上にも危機が迫っている。しかし配牌シンデレラの手は整っていた。前局で鐘の音が鳴ることはなかった。
平和のテンパイ。当然リーチはかけない。ひっそりと![]()
を待つ。まだ河が一段目ということもあり、井上の勝利はほぼ確実。問題は誰が振り込むか。
その候補は小平だった。当たり牌の
が手に2枚あり、それを打てば2着である。ただ、
がここにきて暗刻になってしまった。ある意味一番いらないツモ。もうよほどの事情がない限り、
は出にくい。
小平にはもうひとつ不安要素があった。
を切ってしまうと断么九平和の2000点の放銃で3着となってしまうのだ。そして、その
がいまにも出てしまいそうな者がいた。
須藤だった。上図の手から
を引いた。自身の手は高い手が要求され、
を切っていることもあり、手格好上はいらない。解説の滝沢和典プロも「これは仕方がない」と納得して振り込みを受け入れていた。
簡単には終わらせんぞ、となんと放銃回避。
を切ったのだ。粘りのヤスはゲーム全体をも粘らせることができたのか。これは勝負に影響はない地味な一打ではあったが、筆者が感動した一打だった。これで下石は助かった。
いよいよクライマックス。巡目が深くなってきて、小平が形式テンパイを目指してのカン
をチー。ここで、
、
、
のうちのどれかを切ればテンパイだ。誰からのリーチもないが、井上は延々とツモ切りが続いていたので、警戒していただろう。
運命の選択だ。自然に
を切れば大丈夫。しかし、もし井上にロンと言われたら。ドラがあって1000点ではなく2000点の手だったら。小平は時間を使う。
「ロン」
井上の手が開かれた。そこにドラはなかった。地獄からの天国。1000点の移動で、小平が400点差で2位を守った。














