「最悪の結果」を避けるか
「最良の結果」を得るか…
滝沢和典にのしかかる
セミファイナル敗退の重圧
文・渡邊浩史郎【金曜担当ライター】2021年4月30日
Mリーグ2020、セミファイナルシリーズはいよいよ今日で最終日を迎える。
上に張ったのは今日一戦目を迎えるにあたってのポイント表。奇しくもセミファイナルを迎えたときとまったく同じ並びでの最終戦となった。
セミファイナルでは開始時の上位4チームが最終卓で打てるように日程が組まれる。レギュラーシーズン4位以内通過のアドバンテージとして、いわゆる「結果待ち」の状態を回避させてもらえる。数字として明確に示されるボーダーを見据えて打つことができるのだ。
順位変動がなかった今回の場合、やはり注目は4位のEX風林火山。
5位のKONAMI麻雀格闘倶楽部との点差は68.3pt。2戦のうちどちらかを連対すれば安泰、3着3着でも素点次第では安心の好位置にいるとはいえ油断はできない。それはセミファイナルのスコア移動を目の当たりにしてきた皆さんならお分かりのことだろう。
ラス回避が至上命令として出された第一半荘。進化する王道、滝沢和典が一つ目の使命を背負って今戦いに赴く。
4月30日 1回戦
東家 内川幸太郎(KADOKAWAサクラナイツ)
【東1局1本場】
親・内川の2900のアガリで連荘中の局面。
その内川のドラ切りと白鳥のリーチを躱す、値千金の2600+供託1本のアガリ。
もともとこの手を滝沢がリーチに行くイメージはないが、ポイント状況がよりダマの選択に天秤を傾けている。ラスを引けない都合上、放銃はしたくないのだ。特に他家の打牌に敏感であり読みに優れている滝沢だからこそ、後に選択を残せるダマテンで局消化を狙っていきたい。
その滝沢の思いが打牌によく表れたのが次のような局面。
【東2局】はここから下家の内川の仕掛けに字牌を絞る打。今なら親への放銃もなさそうなの先打ちの形だ。
次巡を引く。内川の手出しもあって完全撤退。
【東3局】ではイーシャンテンを壊す打。だいたいピンフのみの躱し手になるの二度受けの形と不安定なを残すよりは、安全牌を抱えた勝負手のイーシャンテンおよび聴牌を目指す。こちらは攻守兼用の一打。
そして、この半荘の命運を分けたかもしれない選択が訪れる。
ドラのを引いて聴牌。勝負形となった、ここは……
ダマテン!!
理由を考えてみよう。
まず上げられるのは親・白鳥の動向だろう。をポン、チーして打。河を見てもホンイツかどうかの判別はつきにくい。判断できるのは周りに危険なを残しておきたい手牌であったというくらいだろうか。仮にホンイツだとしてもターツが足りてなさそうということを考えると、今ならは通りそうだ。とはいえ次の仕掛けや手出しが入った時にはもうわからない。
そこで次に他家の動向を見てみる。内川は白鳥の仕掛けを見ての対子落としを始めた。これが攻めか受けかはまだわからないが、数巡様子を見れば判断がつきそうだ。たろうも不明だが、どちらも受けているor後に受けたとしたらはかなり拾いやすそうな待ちに見える。
そして自分の手と河を見る。現状はピンフドラ1、リーチの恩恵が高いといわれている打点で、しかも悪くない両面。リーチと行けば大体うまくいくし、麻雀的にも自然だろう。
しかし今滝沢が考えなくてはいけないのが最悪の結果。例えばこの河でリーチしたとき、たろうが降りたら滝沢の河にあるピンズを選ぶだろう。それが白鳥のチーテンを呼んだとしたら?その捲り合いに負けるようなことがあったら?
瞬間のダマテンは全員の動向を探ることができ、緊急避難の保険もついている、おまけにの2種類のタンヤオ変化や赤引きでの打点上昇もある。
もちろん”この局”の「最悪の結果」が起こる確率及びダマテンで加点という”この局”の「そこそこの結果」が”この半荘”の「最良の結果」をどれくらい生むのかといったところは当然精査しなくてはならない。
それら全てを考えた滝沢の、チームとサポーター全てを背負った選択はダマテンだった。
次巡引きで小考の末、降り。ピンズの両面ならこことしか残っていない。この局の最悪だけは避けた滝沢。
結果は親の白鳥の2600オール。
リーチを打っていたらどうなっていたか。白鳥が押し切っていれば滝沢が放銃の結末だったが、仮に降ろせていたら……