果敢な攻めと冷静な判断、
伊達朱里紗はMリーグの
戦場を華麗に駆ける
文・東川亮【金曜担当ライター】2021年10月8日
大和証券Mリーグ2021、開幕週の締めを飾る一戦は、以下の顔ぶれで戦われることとなった。
二階堂瑠美・伊達朱里紗という新加入の2人がデビュー戦を迎え、一方で朝倉康心・沢崎誠は共に、高い実力がありながらも昨シーズンは非常に苦しんだ選手たち。ある意味では、今シーズンを占うとも言えそうな一戦である。
第2試合
南家:伊達朱里紗(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
西家:朝倉康心(U-NEXT Pirates)
北家:沢崎誠(KADOKAWAサクラナイツ)
試合自体は、沢崎誠が盤石の戦いを見せた。東1局の満貫ツモでリードを作ると、東4局では朝倉のリーチに粘ってテンパイを取りきって親番をつなぎ、そこから4000は4100オール、1000は1200オールとツモアガリで大きく加点。あとは他3者のやり合いを見るような形で局を進め、終わってみればアガリ3回放銃ゼロという理想的なスタッツで、見事に自身、そしてチームにとっての今シーズン初勝利を決めた。
もちろん本人としては、こんなもので満足する気はないだろう。果たしてこれが、怖い「マムシ」の復活の序章となるか。
一方で、勝てはしなかったものの印象的な麻雀を見せた選手がいた。「朱きヴァルキュリア」こと伊達朱里紗だ。「ヴァルキュリア」は北欧神話で戦死者を運ぶとされる戦乙女のこと。「朱き」のフレーズは、赤牌3枚が戦局のカギを握るMリーグではぴったりだ。
東1局、沢崎の先制リーチを受けた直後、伊達は役なしドラ1のペン待ちテンパイを入れると、ノータイムで追っかけリーチをかけた。
Mリーグのデビュー戦、本人も非常に緊張しているというなかで先制を受け、
テンパイとは言え愚形で打点もいまいちならば、いったん様子を見たくなる人もいるかもしれない。しかしそうなれば、ツモりでもしない限りいずれ手を崩すことになるだろう。結果は沢崎のツモアガリだったが、伊達のリーチは状況には合っていそうだし、なによりそこに一切の迷いやためらいが感じられなかったところが非常に好印象だった。
その後はしばらく劣勢が続いたが、東4局2本場に瑠美からの出アガリで8000は8900、Mリーグ初アガリを決めて2番手に浮上する。次局も親の瑠美とのリーチ対決で瑠美から5200を直撃、一気に点数を回復した。
2局連続のアガリで迎えた親番で、配牌からドラのが暗刻。伊達の勢いを感じる。
ただ、厳しい失点が続いた瑠美も赤2枚が使いやすい形で入った。どちらもアガりたい手だ。
7巡目、瑠美に選択。を切ればリーチタンヤオピンフに三色やイーペーコーまでついて来そうなイーシャンテンになる。
だが、瑠美の選択は打。場にピンズが高く、の2度受けが苦しいと見たか。
しかし、直後に引き。もちろんこれでもタンヤオ赤赤、5200からのテンパイではあるが、を切っておけばタンヤオピンフ赤赤で三色かイーペーコーのどちらかが絡む、リーチなら倍満も現実的に見える手になっていた。
伊達が瑠美の切ったをチーして1シャンテン。Mリーグでは鳴く際には鳴いた牌を手元に持って来てから打牌をする決めになっているが、先に手牌からを切ってしまったところに、伊達が局面に入り込んでいることが伺える。
さらにポンをしてカン待ちテンパイ、入り方によっては出そうだったが手牌でロックされた。ちなみにこのときはを先に手元に持ってきている、少し冷静になったか。
伊達のが出なくなった分、リスクが高まったのは瑠美。ソーズはリャンメン以上の好形変化が多い形だが、その際はほぼが出ていくことになる。まさに、このパターンだ。
伊達が12000で沢崎を猛追。一方で瑠美は伊達への3連続放銃により、まさかの箱下転落となってしまった。
だが、瑠美もこのままでは終われない。南3局1本場ドラドラのチートイツでリーチをかけ、伊達のこちらもチートイツのリーチ宣言牌を一発で打ち取り。12000は12300でマイナスから脱出。なお、この結果で沢崎は全員から倍満ツモ圏外になり、ほぼトップが確定した。もしかしたらこのアガリを、瑠美以上に喜んでいたかもしれない。
南4局、3番手の朝倉と2番手伊達の点差は2800、テンパイノーテンでも変わる。その朝倉に、ドラが暗刻の手が入った。打点条件は配牌時点でクリアしている。
5巡目にピンズからポン、積極的に手を進める。テンパイノーテンで逆転される伊達に牌を絞る余裕はなく、次も鳴けそうだという読みがあったか。
数巡後、朝倉はこの形に。テンパイできる牌は全て鳴くはずだ。
2シャンテンの伊達がを持って来る。形としては全く不要だが、切れば朝倉にテンパイが入る。
だが、伊達は手を止めて少考した後、朝倉の現物であるトイツのに手をかけた。自身のテンパイから遠のいたとしても、ここでの切りを嫌った格好だ。