その後、をツモ。打とする。
打としておけば、裏目のを引いてきたとしても落としでタンヤオをつけることができる。ただ・などを引けばまだ三色が狙えるためギリギリまでを残す(もちろん引きも嬉しい)。
ただこの選択が裏目となる。すぐに寿人が切ったをポンから仕掛けていた魚谷がポン。
北家なので役役トイトイのイーシャンテン。欲しい牌は。
そして不運なことに、が浮いている黒沢がを引いてしまう。
余剰牌がどちらも魚谷が欲しい牌。もがポンされてしまったため、かなり使いづらくなってしまっている。すぐに切られたをポン。
黒沢の余剰牌をキャッチできるテンパイへ。黒沢は手が進むと放銃してしまう苦しい展開になる。すぐに魚谷がアガるかに思えた。
だがこの局、寿人が黙っていなかった。
10巡目、槓子になったを積極的にカン!
前巡にを切り狭く受けていたので、このカンはかなり意外だった。が3枚見えており全員に比較的安全であるため1枚切って様子を見るのかのように思えた。
だが寿人はここで攻めのスイッチを入れる。そしてこのカンにより、寿人の手に対子であったがドラになる!
一気に勝負手だ。そしてあっさりとを引き…
ノータイムでリーチをかける!
カンからここまでわずか十数秒、展開の速さに見ている方もついていけない。
このリーチにより、魚谷へ放銃寸前だった黒沢のが止まる。
そしてなんとこのリーチ、シャンポンの待ち牌4枚が全て山に残っていた!
高目満貫(待ち)のテンパイを入れていた魚谷との捲り合いになるが、途中で魚谷はギブアップ。
そして見事をツモり、リーチツモタンヤオ三暗刻ドラ3の倍満を成就させる!
そうだよ…! これが見たかったんだよ…!
私は思い出していた。確かに寿人は守備面でもよくファインプレーを見せてくれる。
だが私が見たいのはこういうアガリだったのだ。「麻雀の理不尽さを全部詰め込んだようなアガり」を見せてくれるからこそ、佐々木寿人という選手に魅かれるのだ。
その後も大物手が飛び交う展開となるが、倍満で作った点数差を逆転するまでには至らず、寿人のトップにて終局となった。
コナミとしては本日、滝沢・寿人両名が通算100戦目で連続トップ。さらにチームとしてもメンバー全員で4連勝と正にメモリアルづくしの1日となった。
寿人個人としても今シーズンのマイナスを完済しプラス域に。
元を正せば役満の日も、2018年に寿人が7種の配牌から国士無双をアガったところからスタートしている。マイナスが続く厳しい中でMリーグ初トップを取った記念すべき日だ。
そう、10月26日は「魔王のエンジンがかかる日」でもあるのだ。
日本プロ麻雀連盟所属プロ。株式会社AllRuns代表取締役社長。業界を様々なやり方で盛り上げていくために日々奮闘中。Mリーグ観戦記ライター2年目。常に前のめりな執筆を心がけています(怒られない範囲で)。Twitterをフォローしてもらえると励みになります。
Twitter:@EzakiShinnosuke