小首を傾げながら手牌を見つめる醍醐。
よくあることではあるが、「18000のテンパイだし、リーチの一瀬が掴むかもしれないし」とテンパイを維持していれば放銃はなかった。
しかし、醍醐は知識と経験に基づいてオリを選択し、自らが導き出した最善手を打ち出したのだ。
精神的にガクッと来る放銃ではあるが、醍醐はしっかりと切り替えて、引きずることなくこの後も戦う。
東4局は鈴木が捌いて、南1局。
鈴木からドラ対子の勝負リーチが入る。
宣言牌がとはいえ、マンズは場にかなり安く、実際にリーチ時は山に3枚残っていた。
ツモる手に力が入る鈴木。現物を並べて受け気味の三者。
ところが、そこに激震が走る。
配牌から国士無双の捨て牌で、リーチ後は現物を並べていた一瀬が無筋のをスッと河に置く。
猿川、醍醐はもちろん、リーチをしている鈴木にもそのの意味は分かっている。
すぐに猿川がを1枚吸収して山には1枚、対する鈴木のは2枚。
どちらが勝つか分からない戦いの終止符は16巡目。
盲牌をした鈴木が観念したように河の手前にを置く。
牌から手を離した後の指の震えが印象的であった。
こうなると1枠は一瀬でほぼ決まり。鈴木は次の親番が勝負となるが、猿川があっさりと1000点で捌く。
ここで点棒状況を見ておこう。
猿川 26700
鈴木 -1400
醍醐 26200
一瀬 48500
一瀬は高い放銃さえしなければほぼ確定、鈴木は2着まで28100点差なので、ハネマンツモ2回や、2局で倍満ツモ、満貫ツモとかなり厳しい。
現実的には猿川と醍醐の勝負となった。
醍醐がポンで連荘を狙いに行く。
嵌も鳴けてこのテンパイ。
ここにラス目の鈴木からのリーチ。
これは猿川が粘っているのを見て、リーチで猿川に問題を突き付けて、醍醐の連荘確率を上げに行った判断。
鈴木にとって、現実的には2局必ず必要なので無論出アガル気はさらさらない。
醍醐に連荘してもらうことで、1本場の手牌に賭けたのだ。
目論見通りの流局で1本場。遂に決着がつく。
後々の受けを考えて一瀬が先打ちしたドラのに、醍醐から声が掛かる。
猿川、鈴木は、打てば事実上のゲームセットなだけにもちろんだが、一瀬もオーラスにターゲットとなってしまうので、場に緊張が走る。
ところが裏を返せば猿川はこのチャンスさえ潰せば、オーラス上がり勝負に持ち込める。
猿川にこんな手が入った。
高め出アガリならオーラスアガリ勝負どころか、醍醐に1600-3200条件を突き付けられる。
高め直撃なら、オーラス醍醐に満貫直撃か、倍満ツモ条件を突き付けられる勝負手だ。
しかし、残念ながら猿川の高めは山になく、醍醐の–は山に5枚。
そんなことはつゆ知らず、ツモを信じて模打を繰り返す猿川からノータイムで打ち出された。
これで猿川の条件はハネマンツモ+満貫ツモとなり、事実上のゲームセット。
少しホッとしたような表情の醍醐に対して、いつまでも開かれた手牌から目を離さない猿川の表情が印象的であった。
その後、鈴木が国士無双、四暗刻とイーシャンテンまで、猿川が国士無双リャンシャンテンまで漕ぎ着けるも事件は起こらず。
一瀬、醍醐の勝ち上がりとなった。
勝った2人はもちろんだが、負けた2人の戦いも素晴らしかった。
猿川は引き出しの多さで、鈴木は豪快かつ繊細な手組みでそれぞれ技術の高さを見せてくれた。