“16本のリーチ棒を
かわせ──!”
熟達の狩人に立ち向かった、
白鳥翔の鼓翼(こよく)
文・須田良規 【週刊Мリーグセレクト】2021年12月6~10日
12月9日(木)の第2試合、渋谷ABEMASからは白鳥翔が登板した。
渋谷ABEMASは初戦日向藍子が苦しいラス。
日向は今期の成績が振るわず、白鳥もチームメイトの悔しさを背負って卓に向かったはずだ。
しかし、ここで白鳥に訪れたのは、誰が座っていても困難な、未曽有の圧倒的苦境であった。
同卓者は、
KADOKAWAサクラナイツ・沢崎誠
セガサミーフェニックス・茅森早香
TEAM雷電・本田朋広
である。
最初の危機は東2局の1本場だった。
東家沢崎からこの切りカン待ちのリーチ。
白鳥は、11巡目に安全牌が尽きた。
現物は皆無、スジのは当たり牌という状況。
ダブは生牌で、沢崎に雀頭の牌である。
結果当たりではないが、ここまで生牌なのはやはり危険だ。
小考する白鳥。
しかしこれは──、くらいしか選びようがないのではないか。
もしくは、目をつぶってなのか?
大勢の予想に反し、白鳥が選んだのは、無スジのであった。
おお、と思わず感嘆の声をあげた。
全体の捨て牌は、こうなっていた。
が、沢崎の打牌含めて3枚見えている。
多少麻雀に明るい人なら、
「切りリーチに待ちはやや考えにくい」
ということはイメージとしてあると思う。
リーチ宣言まで、という形で引っ張ることが少ないからだ。
無論例外はいくつかあって、
やなど、周りを厚く持っているケース。
これを白鳥は、の切れ具合から薄いと判断できたのである。
やからの亜リャンメン・ノベタンもあるが、
のあるMリーグルールでは、も1枚切れであるし、受けにする可能性も高い。
やはり、不要牌のを前巡に切ってからの切りリーチは、相当にが以外での関連牌であると思われる。
無スジのより、カンの方が濃いと──。
白鳥はこの1巡を切りで耐えたことが生きて、安全牌の増えた以降の道中を、無傷で凌ぐことができた。
しかしその後も白鳥は、他家の硝煙弾雨のリーチ攻勢に襲われ、
幾度も幾度も窮地に立たされる。
南2局も7巡目に東家沢崎から待ちのリーチ。
これも白鳥は丁寧に受けての17巡目。
どうする。やはり現物はない。
沢崎の待ちは、白鳥のこの手格好でなのである。
を切ればテンパイはしやすい。
ワンチャンスを切るならの方が安全だが、
自身の手も鳴けるイーシャンテンで、下3人が競っている今、テンパイ料も垂涎の状況。
もう甘えて、同じワンチャンスならくらい通しちゃったらどうなんだ?
しかしその誘惑を断ち切って、白鳥が切ったのはであった。