選ばれなかった未来
僕たちの見たかった
雷電の世界線は、すぐ隣に
あったのかもしれない
文・須田良規 【週刊Мリーグセレクト】2021年12月13日~17日
Mリーグも前半戦がほぼ終了。
ここに来て、TEAM雷電のポイントが-577.6ptと、復調の兆しが見えない。
個人的な話になるが、私は麻雀プロとして短くはない年月を過ごしてきて、
よく知る選手もたくさんいるMリーグは、全ての選手、全てのチームを応援しているつもりだ。
これは、一般のファンとは少し違ったスタンスになるかもしれない。
極端なことを言えば、全員がベストを尽くして全員が後悔のない戦いができれば、
どのチームが優勝したっていいと思う。
面白ければ、なんだっていい。
だからこそ、現在あまりに離されているチームがいれば、なんとか奮起して欲しいと思ってしまうのである。
少し前の試合になるが、12月7日(火)の第2試合で、
瀬戸熊直樹がこのような手をツモりアガッた。
ツモ赤赤の1000・2000だ。
多井の仕掛けをかわし、出アガリできないヤミテンにしていたところをツモだ。
元より愚形で曲げにくいところで、上々のアガリだと通常は判断するところだろう。
しかし私はこのとき、違うことを考えてこのアガリを見ていた。
切ってのフリテンリーチは、しないのだろうか?
というのは、これが東1局にU-NEXT Pirates・朝倉康心が8000オールをアガり、
32000点差離された東1局1本場だからである。
そしてこのときの雷電のチームポイントは-516.7pt。
めちゃくちゃにハネツモで朝倉に親被りを叩きつけたい局面ではないだろうか?
しかしこれはもう完全に私の身勝手な印象で、
フリテンリーチが状況的に正しいかどうかは実際よくわからない。
瀬戸熊がこれで良しと思えばもちろんそれはそうするべきなのだ。
ただ、このゲームは瀬戸熊がその後反撃のきっかけを掴めず、4着に終わってしまう。
しかしそれならば──、
あそこで切りのフリテンリーチを敢行した未来も、見てみたかったと思うのだ。
そしてたとえそれが空振って、手痛い放銃になってしまったとしても。
十分にTEAM雷電の標榜する、面白い麻雀は体現できたような気もするのだ。
その違った未来を見たかった、という局面が12月16日(木)第2試合でもあった。
TEAM雷電・本田朋広は南4局3本場で3着から2着に上がるアガリを果たし、ファンはその結果に歓喜した。
しかし実は、雷電にとっての運命を分ける瞬間が、
もう少し前、本当に見逃されがちな1巡に、確かにあったのである。
南4局0本場で、トップに絡んだ点棒状況は以下のようになっている。
東家 赤坂ドリブンズ・園田賢37200
南家 KONAMI麻雀格闘倶楽部・高宮まり38600
北家 TEAM雷電・本田朋広22300
本田は園田と14900差、高宮と16300差の3着目である。
現状ではハネツモもトップには届かない。
園田がポン、チーと2つ仕掛けて、ドラ単騎のテンパイのまま終盤。
対して本田はこの形。赤ドラドラとあるものの、
生牌のを掴んで、園田に打てないでいるところ。
そして16巡目、上家から形式テンパイに取れるが打たれた。
しかし、は危険すぎると踏んだ本田はこれを見送って――
ツモ山に手を伸ばした。
結局この局は園田の一人テンパイ。
高宮とは16300差のまま、園田とは18900差になった。