リーチの嵐に身を投じ、
丸山奏子は自らの価値を示す
文・東川亮【月曜・木曜担当ライター】2022年1月20日
大和証券Mリーグ、2021シーズン開幕式の囲み取材にて、筆者は丸山奏子に対し、自身の出場機会についてどのように考えているかを質問した。過去2シーズン、彼女のレギュラーシーズン出場試合数は、規定回数下限の10回に留まっていたからだ。
もちろん、チーム方針や先輩3人とのキャリア・スキルの差、自身が2シーズンとも100ポイント以上のマイナスをしてしまっていたこともあったと思うが、やはりこの結果が悔しくなかったはずがない。彼女の答えは、こうだった。
「個人の思いとしては1試合でも多く出られたら選手として幸せだが、采配は監督に一任している。1試合でも多く出られるように、自分のベストを尽くす」
1月20日の第2試合、丸山は今シーズン10試合目の出場となった。昨シーズンは2月18日だったから、1ヵ月近く早いことになる。これは、自身がこれまで9戦3トップでポイントもプラスと、しっかりと結果を出していることによるものだろう。
第2回戦
東家:丸山奏子(赤坂ドリブンズ)
南家:佐々木寿人(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
西家:東城りお(セガサミーフェニックス)
北家:勝又健志(EX風林火山)
丸山は東1局の親番で寿人から5800を連続で出アガリ、東2局でも先制リーチを打って東城のリーチ宣言牌を捉えて8000、一気にリードを広げる。序盤にしっかりとリードを作れたことで、丸山はある程度自由に戦える権利を得た。
東3局も、丸山の手がいい。牌の並びがよく、テンパイまではかなりいけそうだ。
そこに上家の勝又から打たれた。チーすればかなり手広いタンヤオの1シャンテンとなる。
だが、丸山の選択はスルー。こういう牌を仕掛けての速攻もありそうだったが、打点を犠牲にして速度を上げるよりも門前で打点も伴わせようという進行、あるいは手牌を短くすることを嫌ったのもあったかもしれない。
その後、親の東城のリーチに対して待ちで追い付き、追っかけリーチ。この局は流局となるが、役ありテンパイをダマテンのかわし手とせず、しっかりとリーチをぶつける姿勢が印象的だった。
丸山は東4局でも、親の勝又の先制リーチに対し、追っかけリーチをぶつける。直前のチーでの形式テンパイでは無スジを勝負する価値はないが、門前テンパイなら勝負する価値あり、ということだ。相手は親で自身はトップ目、局も最終盤ということで、リスクを負わない選択をする打ち手もいそうな局面。この日の丸山は、点数を持った後も強気な姿勢が見られる。
このリーチ対決をハイテイで制し、リーチツモハイテイ赤の2000-4000。これで丸山の持ち点が50000を越えた。
南1局、丸山の親番。2番手の東城とは25100もの差があり、ここは失点せずに親を流せれば、といったところ。そこへ、寿人からピンフ三色が確定したリーチがかかった。はタンヤオかつドラであり、ツモれば倍満すらあり得る大物手だ。
丸山の手はそこそこまとまった形の1シャンテン。ただ、前述の通りトップ目でわざわざ無理をする必要はない。手が詰まったならば、のワンチャンスはかなり選ばれそうな牌に見えた。
次巡、この形で少考。ピンズは寿人に全く通っておらず、ソーズはが現物、はスジになっているが、抜けば手は大きく後退する。もちろん、それで良しとしてもいい局面ではあった。
だが、丸山の選択は切りでの1シャンテン維持。こそが4枚見えで否定されているが、それでも攻撃的な一打だ。
そう打った以上、絶好の引きならば迷わずリーチ。寿人のカウンターを食らうのも覚悟で、さらなる加点を狙った。
ここは2人テンパイで流局。ちなみに、寿人の、丸山のは、合わせて6枚が王牌にあった。
その後、丸山は勝又に満貫を放銃するものの点数を守り切り、最後は東城の3着キープのアガリで試合終了。丸山が、今シーズンのMリーグ4勝目を飾った。
スタッツを見ていただければお分かりの通り、この試合はとにかくリーチが飛び交った。4選手の合計リーチ回数は19回、2軒リーチがぶつかる局も多かった。そのなかで、丸山はトップ目に立ってからも、3度にわたって追っかけリーチを打っている。後手からでも強気に攻撃していく姿勢は、これまでにあまりなかったような気がしている。
なかには、無謀と思える攻めもあったかもしれない。しかし、終盤戦の戦いにおける厳しい局面を考えたとき、こうした攻めの姿勢を出せるかどうかが重要になる展開も出てくるだろう。
そう、レギュラーシーズン10戦を戦った丸山だが、きっとこの先も出番はあるはずだ。なぜなら彼女はここまでの個人成績はプラス74.6ポイント、紛れもなくドリブンズの戦力として機能しているからだ。
過去2シーズンになかった、丸山のレギュラーシーズン11戦目。それを迎えたとき、彼女はMリーガーとして、麻雀プロとして、一つ成長した姿を我々に見せてくれるのだと思う。
さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。