令和の麻雀界に蘇った誠の一文字 頂を見据え、近藤誠一は勝負の鬼と化す【Mリーグ2021観戦記4/18】担当記者:東川亮

松本は、安全に打点を引き上げる現物【6ピン】切りを選んだ。だが、

次巡、近藤が【8ピン】引き。

瞬間、松本は表情を曇らせる。もしもアガリやすさで【2ピン】を切っていれば、ここで5200をアガり、親を蹴れていた。ある程度通りそうだとは考えていたと思われるが、安全策が裏目に。

岡田も【1ピン】を押せていたら、【4ソウ】満貫をツモっていた。

結果は流局。岡田と松本にはアガリルートがあったが、近藤の気迫が2人を退かせた。近藤には、勝たねばならない理由がある。

南2局3本場
近藤はカン【2ピン】ターツを払い、孤立の【5マン】を残した。ここからピンズとソーズで4メンツを作ったところで、打点はたかが知れている。それよりもドラ受けを重視し、打点を狙いに行った。

狙い通りの【6マン】引きで、手牌の価値が一気に高まる。

テンパイ自体は【北】をポンした岡田が先だった。しかし近藤も【4マン】【7マン】待ちで追い付く。もちろん、リーチ。

【4マン】一発ツモ。これぞ近藤誠一、大きく打って大きく勝つ男の真骨頂。

https://twitter.com/SEGASAMMY_PNX/status/1516015838632943617

控え室で見守る仲間たちが、喜びを爆発させる。

裏ドラは乗らずとも、ハネ満ツモでライバルを一気に突き放した。次局を無事に消化できれば、勝利はもはや手中と言ってもいい。

南3局1本場
近藤にピンフテンパイが入った。ダマテンで静かに局を進めるには絶好の手だ。

「リーチ」
・・・!?

牌は横に曲がっていた。ピンフドラ1はリーチというのが現代麻雀のセオリーだと言われている。リーチによる打点上昇の恩恵を受けやすいからだ。だが、南3局の抜けたトップ目、オーラスが自身の親番なら、局消化優先でダマテンにする打ち手がほとんどだろう。

それでも近藤がリーチをかけたのは、【4ピン】【7ピン】待ちでのアガリが期待できると踏んだから。滝沢が国士無双を狙っていそうな捨て牌、そして松本・岡田が早々に【9ピン】を切っていることから、特に【7ピン】の感触が良さそうに見えたと思われる。そしてアガれそうなら、セオリー通りリーチで打点をつり上げる。

ピンフドラ1、ツモって700-1300も、リーチしてツモって裏が乗れば2000-4000。チャンスと見ればどこまでも稼ぎに行く、鬼気迫る麻雀。これが決勝仕様ということか。

2年前のファイナル、フェニックスは最終日を首位で迎えながらも、U-NEXT Piratesの逆転優勝を許した。

最終戦での魚谷侑未小林剛の激突、そして初戦で石橋伸洋が決めた会心の勝利は今でも語り草となっているが、そのとき石橋にトップラスを決められてしまったのが近藤だった。その屈辱と悔しさは今でも、いや、ファイナルにたどり着いた今だからこそ、彼の胸を締め付けているはずだ。


あれから2年。近藤とフェニックスを応援する声は、さらに増えた。そのなかには、この春3歳になったばかりの、小さな大サポーターもいる。

「あの子がもっと大きくなったときに、近藤誠一を応援していて良かったと思ってもらえる自分でありたい」

実況・日吉辰哉の口をついたフレーズ、

「令和に蘇りし新撰組、鬼の近藤」

「誠」の文字を胸に抱き、背負うは不死鳥、仲間やファンの思い。
2年前の借りを返し、シャーレをこの手に収め、喜びを分かち合うために。

近藤誠一は、ファイナルの舞台で鬼と化した。

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