令和の麻雀界に蘇った
誠の一文字
頂を見据え、
近藤誠一は勝負の鬼と化す
文・東川亮【月曜・木曜担当ライター】2022年4月4日
朝日新聞Mリーグ2021-22シーズン、ファイナルが始まった。今年ファイナルに進出した4チームは、どこが勝っても初優勝となる。
試合会場には、優勝シャーレが鎮座している。シャーレはただ、そこで生まれる激闘を見つめるだけだ。そこへ新たに名を刻むチームは、果たして。
第1試合
東家:岡田紗佳(KADOKAWAサクラナイツ)
南家:滝沢和典(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
西家:松本吉弘(渋谷ABEMAS)
北家:近藤誠一(セガサミーフェニックス)
序盤、まずリードしたのは岡田だった。東1局の1300オールツモに続き、親番でドラ赤赤の4000オールを決め、3者を大きく突き放す。
サクラナイツは、個人成績2位と大活躍した沢崎誠が療養のために戦線を離脱。ファイナルを岡田・内川幸太郎・堀慎吾の3人で戦うことになった。
「沢崎さんがいなくても勝つ」
そして
「沢崎さんに優勝を届ける」
決意を秘めたチームの先鋒として、桜の女騎士が敵を蹴散らすかに見えた。
東1局2本場。
近藤の手が4トイツになった。暗刻が一つ、リャンメンターツもあるので、メンツ手にもトイツ手にも行ける形だ。ただ、ルートがいくつか見えているだけに選択が難しい。いろいろな可能性を残すのであれば、切りなら受けも残るので、最もロスが少ない。
だが、近藤はを切った。かなりトイツ手に振った進行である。
すぐにをポン。を切ればチーにも備えられるが、
近藤は切り。既にが2枚切れていることもあったが、かなり大胆に手を固定した。絶対にこの手を満貫以上に仕上げようという、意志のある打牌。
近藤は、タイトル獲得経験豊富な打ち手である。そして、ファイナル開始時点でフェニックスは4位、そしてサクラナイツは首位。ポイント差はそれほど大きくないとは言え、岡田に走られている現状、近藤の勝負勘は中途半端な打点での妥協を許さなかった。
滝沢からのリーチをものともせず、ポンからを捉えてトイトイドラドラの8000。これで岡田追撃の一番手に浮上した。
その後は近藤が2局連続で小さなアガリを決め、迎えた東4局。ここがこの試合のターニングポイントになった。
松本が第1ツモの前にオタ風のをポン、ホンイツで打点を作りにいく。
岡田も早々に1シャンテン。タンヤオでドラもトイツ、打点もある強力な手だ。
近藤、滝沢は2人に比べて手牌の形が厳しく、やや出遅れた形。
最初にテンパイしたのは松本。をポンしていて、ホンイツのテンパネ5200となかなかの打点。
続けて岡田もテンパイ。待ちのツモり三暗刻に受けず、見た目の枚数でカン待ちに受ける。両者の待ち牌は山に3枚ずつ残っていた。
だが、苦しかった近藤もジリジリと追い付いてきた。を暗刻にして1シャンテンにし、ドラ受けカンターツ払い。
そしてフリテンのを引き戻してテンパイ、役があってダマテンが利くにもかかわらず、リーチをかけた。周りへ圧をかける意図もあったと思われるが、それ以上に自身の打点を重く見ていただろう。とにかく、打牌のトーンが尋常ではない。
岡田の手に力が入った。はリーチの近藤はもちろん、ピンズのホンイツ模様の松本にも通っていない。
岡田はを通せる情報を河や相手の動向から探る。もちろん、自身がドラ3枚の勝負手であり、アガれば決定打にもなり得る。しかしここでラフな放銃をしてしまえば、自身のトップはもちろん、チームの状況すら危うくさせてしまいかねない。
確固たる理由がないならば、願望や一か八かで押せる牌ではない。岡田は撤退を選択。
続いて松本に分岐点。引きで、トイトイ変化での満貫ルートが生まれた。はのダブルワンチャンスとは言え通っておらず、は現物、は無スジ。